インフレ時代、既存店をいかに高めるか? ライフ、ヤオコー、ビッグ・エーの共通項とは
ヤオコー川野社長「来店頻度を高める」
ヤオコーの川野澄人社長は、同社の商勢圏のうち、北部エリアは客層に占めるシニアの構成比が高く、客数も買上点数もさほど伸びていないといいます。
「北のエリアでは点数を確保する施策が必要。また、チラシへの感度が高い特徴もあるので、ハイ&ローによって集客を図る」(川野社長)
一方、南部エリアは数年来の取り組みであるEDLP(エブリデー・ロープライス)や、月1回の「豊洲祭り」「イタリアフェア」、その他催事での企画提案が集客につながっているといいます。
「普段は来店されていなくても、今日はハロウィンだから、クリスマスだからヤオコーに行こうというお客さまがいる。価格政策や、ファンづくりにつながるような独自商品を磨いていくことで、さらに来店頻度を高めていく」(川野社長)
24年3月期は既存店の客数・客単価とも大きく伸ばしているヤオコーですが、23年9月の商圏シェアは平均で19.9%です。「商圏シェアはまだ上げられる。だから前年のハードルは超えられないほど高いものではない」(川野社長)と、成長の余地を見出しています。
ビッグ・エー三浦社長「買上点数が上がれば、客数はついてくる」
ビッグ・エーの三浦弘社長は、既存店の伸長を続けるために、まずは買上点数の増加に取り組むといいます。
「買上点数が増えるのは、品揃えに関するお客さまの評価が上がっているという証だ。月1回のチラシでお客さまを呼び込み、買い物への満足が点数増に現れるようになれば、結果的に客数も増えていく」(三浦社長)
買上点数を増やすために、①品切れをなくす。②欠落品(他店の売れ筋なのに自店にはない)をなくす。③標準3000品の品揃えの中での編集力を高める。以上3点を徹底しているそうです。
客数が増えるのは、買上点数に示される顧客満足アップの結果という考え方に、インフレ時代の環境変化を感じました。低価格を打ち出して集客するという作戦の一本槍では限界があるということです。
ビッグ・エーの従来の価格戦略は、競合との比較で一律的な安さを志向し、「トップNB(ナショナルブランド)の価格を競合よりも低く、どこよりも安くしたいというDNAで戦っていた」(三浦社長)というものでした。しかし今の環境下、それは「企業として持続可能な価格戦略なのか?」(三浦社長)という疑問に変わったそうです。
先の3000品の編集力にも関わることですが、どの商品をどのような価格に設定すれば、安さを期待する顧客の満足度を最大化できて、店舗の利益も最大化できるかを探求しています。
「今までとは異なる視点で、仮説を立てては修正しながら、データ分析を続けている。科学的な根拠を掴みたい」(三浦社長)
デフレ環境においては、既存店の売上が伸びれば業績は改善しました。しかし、さまざまなコストが増加しているインフレ環境にあっては、既存店が伸びていればOKではなく、どのように伸ばしていくかを考えなければ収益がついてきません。
ここに挙げた3社に共通するのは、一品単価はままならないという前提です。一方で、客数・買上点数については能動的に取り組めます。それらをいかに伸ばして、既存店の売上げ・利益を高めていくか。インフレ時代の既存店戦略は、デフレ時代よりもいっそう複雑です。