奇妙なデジタルツールの誘惑…… 沈むアパレル、2020年の危険な兆候
消費者が何か行動するたび、
GAFAに上納する仕組みができあがっている
よく考えて頂きたい。日本の人口は減りつづけ、衣料品に対する可処分所得はこの20年間で半額になっている。
私たち消費者は、AppleのiPhoneなどスマホで情報武装し、Googleをつかって最も安価な商品を検索し、Facebookで友人に情報拡散し、Amazonでポチって買い物をしている。
つまり、私たちの行動の中にGAFAは深く入り込み、我々が何かをすればGAFAに上納金を納めるビジネスモデルができあがっているのだ。我々は知らない間にGAFA (Google、Amazon、Facebook、Appleの略語)のプラットフォームの上で踊っており、あらゆる行動の一挙手一投足はGAFAの売上になっている。
アパレル産業が崩壊するのは必然
「縮小する市場の中では、売上を追いかけてはならない。利益率を上げよ。まずは、在庫の最適化からはじめよ」とあれほど警報を鳴らしても、営業会議でトップや役員から「昨対比を上回る売上(利益ではない)をあげろ!」と檄を飛ばされた挙句、売れもしない余剰在庫を積みまし、原価率をどんどん引き上げる。どの企業にいっても、利益率が下がっている理由は恐ろしいほど似ている。
縮小する市場の中で、競争優位性が均衡状態であるときは、売上を落とす方が利益率も額も上がるのは、毎年の在庫損失額に目を向ければ誰でも分かるだろう。だから、成長したいのであればMDの衣料品比率を下げるか、縮小する市場から抜け出し海外に活路を見いだすしかない。勝っている企業はみなそうしている。
「うちは、難しいことなど考えずに、作ればうれるんだよ」。私から見れば、単にトレンドという名の神風が吹いているだけのアパレル企業の経営者は高笑いをしていた。しかし、この企業も、あと数年後には破綻に追い込まれているだろう。ビジネスモデルがしっかりしている企業はトレンドが変わっても耐えられる強さを持っているが、単にトレンドに乗っているだけでブレークしている企業は神風が止めば経営破綻する。過去、倒産した企業の理由は皆同じだ。そして、「まぐれ当たりで勝っているか」、「ビジネスモデルで勝っているのか」を当事者が分からないのが、アパレルビジネスの怖さなのだ。
これらを踏まえて次回、アパレル企業は2020年の世界をどう勝ち残っていけばいいのか、について解説する。そこでは、ブランドを毀損しかねないダイナミックプライシングの是非についても触れたい(次回は1月6日に公開します)。
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)