決定!「第2回サステナブル・リテイリング表彰」 オイシックス、アークス、セブンの施策が受賞
アークスの3つの
アプローチから見える
「誰も取り残さない」姿勢
アークスは「買物難民対策」の施策で、「Leave no one behind(誰も取り残さない)賞」を受賞した。北海道、東北を中心に約380店を展開するアークスは、その商圏エリアの多くで、人口減少や少子高齢化とともに、小売店の閉店も進んでいる。そうした理由で買物が困難になってしまった地域・人々に①「商品を届ける」、②「店舗を届ける」、③「交通手段を届ける」という3つのアプローチで対応を行っている。
具体的に①「商品を届ける」では、13年よりグループ横断で、ネットスーパーなど時代に応じた販売手法を検討するプロジェクトを発足。現在ではラルズ(北海道)とベルジョイス(岩手県)がネットスーパー「アークスオンラインショップ」を展開し、北海道内では9市12町の約170万世帯、岩手県内では盛岡市西部と近隣市町までサービスエリアを広げている。
➁「店舗を届ける」では、道北アークス(北海道)が、売場面積約230㎡~450㎡を中心とした超極小型店舗「Daマルシェ」業態を計8店舗展開している(23年9月末)。
同業態は、道北アークスの総合物流センターとデリカセンターから商品を供給して、店舗での加工作業をなくすことで、小型店でかつ人件費や水道光熱費等の固定費を最小限に抑え、周辺人口3000~4000人など小商圏でも出店を可能にしている。
③「交通手段を届ける」では、宮城県で10店舗を展開する伊藤チェーン(宮城県)が、自社店舗へ送迎する「無料お買い物バス」の運行を行っている。宮城県名取市の「買い物機能強化及び高齢者等の外出機会の拡充に関する事業」の募集に応じるかたちで20年9月から運行を開始したもので、現在は1台のバスで計3店舗を日替わり(各店・月水金と火木土のいずれか)で周回している。
3つの施策が
いずれも黒字化
アークスが高く評価されたのが、3つの施策とも、数値で結果と施策の広がりが示されていること、またいずれの施策も企業努力を重ね、事業として黒字化している点である。
たとえば「無料お買い物バス」でも、告知や買物クーポンの配布などにより利用促進を図り、利用者が21年で450人、22年で580人、23年で700人と増加。この利用者増と、送迎コースの改廃などの効率化により、人件費や燃料代、整備費等の諸経費をカバーし事業単体で収益が出ているという。アークスは、収益追求が目的の事業ではないとしているが、単なる社会貢献事業にとどまらせず、サステナビリティをビジネスによって実現していくという姿勢が感じられる。
もう1つの評価された点が、賞の名前にもなっている「誰も取り残さない」という姿勢である。この「Leave no one behind(誰も取り残さない)」は、SDGs(持続可能な開発目標)が掲げるビジョンである。アークスは自社のサービス対象者である買物客に対し、買物が困難になっている人も取り残さず、自社の経営資源を活用して買物機会の提供を行っている。
選考委員の篠原欣貴氏は「ビジネスモデルを生かして社会貢献を実践していくことを示す好事例。SDGsのスローガンである『誰も取り残さない』を体現している」とコメントを寄せている。