「ブルーノート」での演奏体験も!コト売りで業績伸ばす島村楽器の戦略とは

2023/11/20 05:59
Pocket

すべては「音楽を楽しむ人を一人でも多く創る」ため

島村楽器YOUR STAGE
サントリーホール開催された「YOUR STAGE」の様子

 島村楽器の人材登用は実力評価で、新卒社員も48年にわたって毎年採用しているが、アルバイトとして入社し、契約社員、社員と雇用形態が変わり、店長を任せられるケースも多い。現在の店長も半数がアルバイト出身で、役員に登用されている人もいる。店舗での販売実績を公平に評価する制度が根付いている証明といえるだろう。しかし、実力評価の負の側面として、ピアノや高級ギターなど高額商品の販売にばかり力を注ぎ、音楽教室の運営に熱が入らないスタッフも一定数いたという。

 「音楽教室というのは利益率が高く、店舗の業績、会社の経営という視点で見るとメリットが大きい。毎週レッスンに通っていただける生徒さんは非常に大切なお客さまで、その方たちをしっかり増やしていくべきなのだが、一部スタッフにその意識が足りていなかった面があった。売場が広すぎるために営業効率が悪くなっている店舗もあり、音楽教室のニーズを調べてみると、生徒さんをもっと増やせる店舗が十数拠点あった。それで売場を縮小して音楽教室に使うスペースを確保し、指導する先生を採用して開講すると、かなりの成果をあげることができた」(廣瀬社長)

  前編で詳細したECでの販売強化に加え、人材育成、音楽教室の拡大。3本の矢を放ち、さらに強い企業として経営体制を整えているように見える島村楽器。ECで購入した楽器の相談に店舗を訪れ、専門知識を備えた販売スタッフに相談する、演奏の上達のために音楽教室に通う。このような流れも思い描ける。ECによる購入割合は非公開で、数字は明らかにできないものの、2桁を超えているそうだ。今後さらに成長していきそうな気もするが、廣瀬社長は「ECの比率が高ければ高いほど良いかというと、そうではない」と言う。店舗でのリアルな接客を通じて、最初から間違いのない楽器選びができることは、島村楽器ならではの大きな魅力であり強み。「全国に店舗があるので『オンラインで買ったけれども、ちょっと困りごとがあるので、店舗に持って行って相談したい』といった使い方を積極的にしていただければ」(廣瀬社長)

 島村楽器の取り組みは、そのすべてが「音楽を楽しむ人を一人でも多く創る」ため。子どもの成長にあわせてサイズアップしていくバイオリンなどクラシック楽器のレンタル、ギターの上達をサポートする月額制の動画配信サービス『ギターセンパイ』の提供などのほか、音楽教室の生徒がサントリーホールなど一流のホールで演奏を披露できる『YOUR STAGE』(ユアステージ)やブルーノート東京でジャズライブができる『Swing Dream』といったイベントも企画・開催している。今後の展開について、廣瀬社長は「新しい事業を始めるにしても、やはり音楽に関係したもので、お客さまのニーズにしっかりお応えできるものを作っていきたい」と話しており、これからの取り組みも注目される。

 

1 2
© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態