食品小売業の大問題点!今なぜ80年代の米国小売に学ぶべきなのか?

文:佐々木 桂一(リテイリングワークス)
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ウォルマート外観
筆者は2000年頃、ウォルマートの元幹部から、「商品構成の考え方」「CR」「DWH」「店舗支援端末の考え方」「自動補充システム」「物流システム」を学んだ。ウォルマートの基本的なビジネスの考え方は「リアルタイム・インベントリー」だ

はじめに

 本連載では、食品小売業が10年後も持続可能なビジネスであり続けるために、食品小売業のその時々の経営課題を解決するなど、いま話題の経営テーマやテクノロジーをテーマにあげ、その食品小売業への転用などを逐次解説していきたい。まず連載のイントロダクションとして、初回では「食品小売業の問題点」と題して、食品小売業が抱える問題点をつまびらかにしていきたい。そのうえで、同様の課題に直面しながら、1980年代の米国小売業はその問題をどう解決していったのかを解説して、課題と解決策の本質を明らかにしていきたい。

デジタル投資で効率が上がらない理由

 実は、いまの小売業が抱える課題は、1980年代の小売業が抱えていた問題と恐ろしく似通っている。それゆえ、問題の本質は同じであり、そこから解決策を導くことができる。まずは時計の針を80年代に巻き戻して、問題の本質に迫りたい。

 私は約43年前にダイエーに入社した。奇しくも現在と同様、食料やエネルギー価格の急騰で物価も大幅に上昇していた頃だ。実質消費支出は、80年から2年続けてマイナスを記録する経済環境の中、ダイエーが当時掲げていた「良い品をどんどん安く」がいかに顧客の支持を得ていたかを実感した。

 開店前には多くの客が列をなし、商品がバックルームから売場に出た途端にダンボールに入った商品がなくなるということも経験した。私が入社した年はダイエーが売上高1兆円を突破した年だ。売上高や営業利益に至るまでが好調で、このまま世界一の小売業になるかもしれないと思わせるほど、勢いがあったのだった。

 しかし、それから2年もせずに業績に急ブレーキがかかった。出店競争、価格競争により売上高にかげりが出て、在庫増加、不良在庫の増加などで資金繰りが悪化していった。連結子会社の赤字幅拡大もあり、83年2月期には連結最終損益は赤字へと転落したのである。

 この頃、全国的にパソコンが普及し始めた。小売業においてもPOSレジの導入、コンピューターの活用、FAX、高速コピーなどデジタルを活用した業務改革や、データを活用した「単品管理」が普及し始めた時代である。ダイエーでも毎週、経営管理資料(坪あたり営業利益、在庫金利などが詳細に記載されていた)が店舗に届いていましたが、日々のマネジメントに生かされることはなく、デジタルを有効に活用するには組織改革が必要だと痛感した。

 小売業はいまだに「経験、勘、度胸」が中心だ。そのうえ、変化を嫌う官僚主義化組織が多い。実はそうした企業においては、デジタル投資は無駄になる。各企業のIT投資額が増えても、「経営効率」が変化しなかったことがその正しさを示している。

同じ問題に直面した米小売業の解決策

 米国食品小売業においてもバーコードを使用した

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