ポスト・コットンは「パイナップルの葉」? 沖縄発ベンチャーが挑む新天然繊維の可能性
水で繊維を取り除く新技術を開発
宇田氏がさらに調べを進めると、20年ほど前にはパイナップル繊維の開発に成功し、注目を集めていた時代もあった事実を知る。しかし、一般的に流通・活用できるレベルにはならず、一時期のブームで終わっていたこともわかった。
というのも、当時の繊維抽出技術は手動の機械にパイナップルの葉をかけ、金属の刃でこそげ落としながら繊維を抽出するというもの。手間がかかるうえにピリング(けば立ち)が出る、染色したときに色ムラが生じる、強度が低いなど、品質にも問題があった。
2021年にはクラウドファンディングで資金調達し、新たな繊維抽出機械を開発。以前よりきれいに繊維を取り出すことには成功したものの、まだ手作業の工程が多く、生産性に課題を残した。
その後も試行錯誤を繰り返す中で、フードリボンがたどり着いたのが、水の高圧噴射で繊維を取り除く技術だ。金属の刃も薬剤も使わないので、繊維を傷つけずに取り出せる。さらに、葉を機械に置くだけで連続的に繊維を取り出せるように工程を改良し、生産性も向上した。
繊維抽出技術の開発だけでなく、宇田氏たちはこの機械を活用してパイナップル農家の所得向上につなげるビジネススキームを考案。機械を農家コミュニティに無償貸与し、農家が自ら現地で繊維化。フードリボンがその繊維を仕入れ、農家コミュニティに仕入れ代金を還元するというものだ。
「大型の工場で集中的に処理する方法もあるが、葉の約6割は水分なので運搬にエネルギーもコストも余計にかかってしまう。そうではなく、農家コミュニティの中に生産拠点を分散させることで、生産効率を高めるとともに運搬コストを減らすことができる。さらに農家の所得向上も期待できる」