店舗の売上もアップ!不二家の冷凍スイーツ自販機が予想の3倍売れた理由

2023/08/30 05:55
吉牟田祐司
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試算した売上見込を300%上回る結果に

不二家キッチンカー
東京サンケイビル正面広場に期間限定で設置されたキッチンカー

 店頭に設置された煌々と光る自販機が前を通る人の目を引いて「ペコちゃん人形のような働きというか、視認性を高める効果も出ているようだ」と酒井氏は分析する。実際、販売データを確かめると、冷凍スイーツの購入時間帯は、設置場所によっては売上の60%が19時以降に計上されているという。「夜中の2時、朝の4時、5時にも売れている。これはさすがに想定外だった」(酒井氏)とうれしい誤算もあった。

 設置する自販機が選定されて「FUJIYA CAKEs STAND」のプロジェクトが具体的に動き出したのは2023年に入ってから。2月、東京・大手町の東京サンケイビル正面広場で平日限定のイベントとして「出張スマイルスイッチ部!FUJIYA CONFECTIONERY」を開催、スイーツボトルのパイロット版といえるカップシフォンケーキを販売した。製造部門と販売部門が一体となり、品評会を開き、さらに改良を重ねて、商品の品質を高めていき、東京と埼玉の2ヵ所で「FUJIYA CAKEs STAND」を稼働させたのが6月30日。最初の購入者は本社ビル1階にある不二家本店「OTOWA FUJIYA」に販売開始時刻の30分前から並び、250円ずつ出し合って「ホワイトチョコレートケーキ」2個セットを購入した大学生の女性2人だったという。

 「世界のすべてのお客さまに愛される企業を目指す」が不二家のビジョン。酒井氏は「広く一般のお客さまに本物のスイーツを味わっていただこうと取り組む中、カジュアルなイメージを持っていただけているように感じていたが、それでもお店に入ることに抵抗があった人はいたかもしれない。そのハードルを下げることができたのでは」と手応えをにじませる。

不二家洋菓子事業本部管理業務部
洋菓子事業本部管理業務部の酒井哲也氏

 設置した「FUJIYA CAKEs STAND」の反響は予測を大幅に上回り、試算した売上見込の300%を超える結果を出している。現在の商品ラインナップは10種類だが「立地に応じて、販売する商品を変えることもあり得る」と酒井氏。直営10店舗でスタートした展開も「FC店舗での展開はもちろん、自販機単独での設置も含めて、あらゆる選択肢を排除せずに考えていく」と話す。

 スイーツ購入のハードルを物理的も心理的にも下げることに成功した「FUJIYA CAKEs STAND」は、顧客との新しい接点を生み出した。稼働開始から間もないうちに予想を大きく超える反響を獲得しており、今後の展開も注目される。

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