店舗の売上もアップ!不二家の冷凍スイーツ自販機が予想の3倍売れた理由
相乗効果で店舗の売上も向上した
「餃子の無人販売店などが注目を集める中、私たちも新しい販売手法にチャレンジしてみたいと思った」と酒井氏。実はセミフレッドクリームを使ったケーキは一時期店舗で販売したことがあり、ひそかにレシピの改良を重ねていた。
スーパーマーケットなどで売られている冷凍ケーキは解凍に3時間ほどを要し、その間に水分が飛んでスポンジ生地のしっとり感が失われパサつくことも多い。しかし不二家には企業秘密の独自製法があり、常温に5分ほど置けばおいしく食べられるように仕上げることができた。
自販機は大手メーカーであるサンデン・リテールシステムの「ど冷えもん」を採用。多様な容器の形状に対応し、大きさの異なる商品を1台で販売できるマルチストック方式の自販機である。展示会に河村宣行社長と瓜生徹専務が足を運び、即決したという。
販売する10種類は「数百種類のアイテムから、自販機でケーキが買われるシーンを想像して選定した」と酒井氏。具体的には19時以降、仕事帰りや学校帰りにふと「ケーキが食べたい!」と感じた時をイメージし、どういった食べ方をされるかを深掘りして「シェア」をキーワードにした。
自宅に持ち帰ってパートナーと分け合う、友だちと食べる、それだけでなく一人で食べて、冷蔵庫で保管して翌日に食べるという時間軸でのシェアも意識した。顧客に「喜び」「楽しみ」を提供する新しい接点として登場したのが「FUJIYA CAKE’s STAND」であり、不二家の冷凍スイーツといえそうだ。
ケーキ1個当たりの値段で比較しても、不二家洋菓子店で取り扱う商品は1個500円以上で、自販機では2個500円と半値以下になり、物価上昇が続く中でありがたい話だ。
安さの秘密は原材料のコストにある。わかりやすい例をあげれば、店舗販売用のケーキには生のいちごなど生鮮フルーツがふんだんに使われるが、冷凍スイーツではそれが冷凍フルーツやシロップ漬けになる。その結果、店舗と冷凍自販機では取扱商品が明確に異なり、カニバリゼーションを起こすこともなく「相乗効果でむしろ店舗の売上も向上している」(酒井氏)という。