「本多塾」塾長が語る流通業界 時事放談 第1回
「消費税増税を端緒にした消費スタイルの変化」

2019/11/04 09:00
    (株)本多コンサルティング 代表取締役社長 本多利範
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    日本でもキャッシュレス化が加速

    2014年の増税時と比べてスマートフォンの使用率が跳ね上がったほか、中高年世代でもネット通販を利用することに抵抗を感じない人が増えました。生活者の消費スタイルはこの5年間で大きく変化しています。

    「WeChat Pay」「Alipay」の普及によりキャッシュレス化が急速に進んでいる中国では、買い物から食事、公共交通まで、スマートフォンひとつでほとんどの決済が可能です。これまでは現金決済が主流で、他国に比べてキャッシュレス化が遅れていた日本ですが、今回の消費税増税を機に、生活者の中でも「ポイント還元もあり、キャッシュレス決済の方が得だ」という意識が芽生え、今後はポイント還元率のよしあしで利用店舗やサービスを選ぶという人が増えてくるかもしれません。

    少子高齢化に伴う人口減少により、小売業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。この数年はインバウンド需要による特需もありましたが、2020年以降はこれもあまり期待できないでしょう。2025年には団塊の世代が75歳超、国民の3人に1人が65歳以上という超高齢社会になり、人手不足もより深刻化します。

    これまでコンビニエンスストアは、顧客のニーズに応え、公共料金の支払や宅配受付、ホットスナックの提供など、カウンター業務を次々と増やしていきました。日本のコンビニエンスストアはいわば足し算で成長してきた業態でもあるのです。しかし、キャッシュレス化が進み、中国のようにセルフレジや無人店舗が増えてくれば、こうしたカウンター業務もなくなっていくのかもしれません。

    消費税増税はひとつのきっかけにすぎません。キャッシュレス化を含め、消費スタイルはさらに変化していくでしょう。この変化に対し、柔軟に対応していくことが、小売業各社に求められているのです。

    (構成:石山 真紀)

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    本多利範氏

    本多 利範 氏

    1949年神奈川県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。大和証券を経て、1977年セブン-イレブン・ジャパン入社。1996年、同社の最年少取締役に就任(取締役食品部長、当時)。98年に渡韓し、ロッテグループ専務取締役として韓国セブン-イレブンの再建に従事。帰国後、スギ薬局専務取締役、ラオックス代表取締役社長、エーエム・ピーエム・ジャパン代表取締役社長などを歴任。2010年よりファミリーマートにて常務取締役員として新規事業を担当、15年より取締役専務執行役員・商品本部長としておにぎりや弁当など多くの商品の全面改革に取り組む。17年に取締役専務執行役員・社長補佐就任、ユニー顧問を兼務。18年に株式会社本多コンサルティングを設立。著書に『売れる化』『おにぎりの本多さん』(プレジデント社刊)など

    ※このプロフィールは、DCSオンラインに最後に執筆した時点のものです。

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