「本多塾」塾長が語る流通業界 時事放談 第1回
「消費税増税を端緒にした消費スタイルの変化」
コンビニエンスストアの商品開発に深く携わってきた本多利範氏が、チェーンストア躍進のヒントを探る新連載。第1回は2019年10月の消費税増税と、それをきっかけにして大きく変化する消費スタイルについて解説する。
消費税増税のインパクトは前回より低い
2019年10月1日、消費税が8%から10%に引き上げられました。2014年4月の増税の際はタバコの値上げの影響もあり、食品スーパーやドラッグストアに加え、コンビニエンスストアでも駆け込み需要がありました。先買いされたカテゴリーの多くは、生活関連の日用品など購入頻度の低い商品群でしたが、5%から8%へ引き上げられた前回と比べ、今回の増税は2%の引き上げということから、私自身、駆け込み需要はそれほど大きくないと予想していました。
インテージの消費税増税の駆け込み需要に関する調査によると、消費財関連については前回の増税時ほどの駆け込み需要は見られませんでした。また、軽減税率が導入された食料品についても、増税前から広く周知されていたこともあって、対象外であるアルコール飲料を除いて低調でした。一方、軽減税率の対象外である日用雑貨や化粧品、ヘルスケアなどについては、前回増税時と同程度で購入金額が増えたようです。
今回の増税対策の目玉として挙げられたのが、キャッシュレス決済によるポイント還元施策です。 18年12月、「PayPay」による「100億円あげちゃうキャンペーン」は、生活者に大きなインパクトを与えました。家電量販店では全額キャッシュバックを期待し、スマートフォンのアプリ画面を開いた買い物客が大勢詰めかけたのも記憶に新しいところです。
この集客力に目を付けて、コンビニエンスストア各社はスマートフォンによるキャッシュレス決済を相次いで導入。そこから飲食店や食品スーパー、ドラッグストアなど小売業やサービス業へと広がっていきました。「PayPay」を皮切りに、「LINE Pay」「メルペイ」「QUICPay」など、いくつもの事業者がポイント還元のキャンペーンを次々と打ち出し、ユーザーの獲得に努めています。