Z世代とコラボし手帳デジタル時代にヒット連発!OEM主業 老舗メーカーのアジャイル開発とは
初年度は「50冊」……自社ブランド確立に苦労
大手印刷会社を経て家業である伊藤手帳に27歳で入社、2008年に31歳の若さで実父から社長を引き継いだという伊藤氏。OEMの手帳生産だけでも安定した経営を続けていたが「手帳会社の社長ってどんな手帳を使っているんですか?」と聞かれることが多かったという。
「その際に他社の手帳を紹介するのにもどかしさを感じていた。大きなPR機会の損失でもあり、いつかはオリジナルの手帳を作って、メーカーとしてのブランドを確立したいと思っていた」(伊藤氏)
オリジナル手帳の開発に乗り出したのは2012年。しかし、OEMを主業とするメーカーが自社ブランドを確立するのは簡単ではない。ネックになったのは販路が限定されること。立場上、書店などに取引先の手帳ブランドが並ぶ隣に自社の手帳を置くわけにはいかない。販売チャネルはおのずとECに限定された。
ECサイトを立ち上げたものの、地方のBtoBメーカーの名前を知る消費者は皆無に等しい。初年度に作ったオリジナル手帳はわずか50冊しか売れなかった。
「商品には絶対の自信があるのに、広め方がわからない。『もう止めようかな?』と何度も心が折れかけた」(同)
転機が訪れたのは2015年頃。ECが新しい消費スタイルとして定着したことに加え、そこに「セパレートダイアリー」のヒット商品が生まれ、Twitterで「ユニークな手帳の会社」と口コミが広がっていった。その認知度に比例して売上も伸びていった。