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時価総額で三越伊勢丹を上回る! 神戸物産の“競争しない”競争戦略に迫る

業務スーパーを展開する神戸物産(兵庫県/沼田博和社長)の勢いが止まらない。2018年10月期決算は、売上高2671億円(対前期比6.2%増)、営業利益157億円(同7.6%増)、直近の19年10月期第2四半期決算でも売上高は対前期比9.9%増、営業利益は21.1%増と絶好調をキープする。多くの食品小売業が業績にブレーキがかかるなか、神戸物産はなぜ孤高の強さを実現できるのか。そこには2つの“競争しない”ための競争戦略の両輪があった。

神戸物産は全国43都道府県に833店舗(19年7月末時点)を展開する

時価総額は今年8月に
一時4000億円越え

 好調な業績に支えられ、神戸物産の株価は右肩上がりで推移する。昨年の8月は2000円台半ばだったが、じわじわと値を上げ続け、その1年後の815日には6370円を付け、時価総額は一時4000億円を超えた。一部投資家による利益確定売りがあったことなどから、93日終値ベースでの時価総額は3591億円と落ち着いているものの、それでも営業収益12000億円を誇る三越伊勢丹ホールディングス(時価総額3095億円)を大きく上回る。

 日本人の夢とあこがれの象徴であった百貨店の雄をいとも簡単に追い抜いた、神戸物産とはどんな企業なのだろうか?

 JR加古川駅より車で約20分。近隣に田畑が広がるのどかな片側一車線の道路沿いに、年季の入った小売店の建物とかなりの台数を収容可能な駐車場から成る敷地がある。その片隅にある建物が神戸物産の本社だ。売上高2600億円超の企業とはとても思えないほど質素な佇まい。さらにいえば、年季の入った小売店と言うのが、神戸物産が2店舗だけ運営している直営業務スーパーの1つ、「業務スーパーフレッシュ石守稲美店」である。広い駐車場には午前も午後も車が入れ替わり立ち替わり入出庫する様を認めることができ、繁盛店であることがわかる。

店内に入ると「毎日がこの安さ この価格!!」「プロの品質とプロの価格 業務スーパー」という幟が吊り下げられ、低価格を訴求

 店内に入ると「毎日がこの安さ この価格!!」「プロの品質とプロの価格 業務スーパー」という幟が吊り下げられ、取り扱いカテゴリーは他のスーパーマーケットと同様ながら、いわゆるナショナルブランド(NB)商品は少なく、国内自社・グループ工場で製造したプライベートブランド(PB)商品、海外商品部が直接買い付けたり海外の工場で開発したりした輸入商品が並ぶ。5個セットのPBレトルトカレー250円(税抜き、以下同)や自社養鶏場で育てたむね肉2820円など、文字通りの激安価格だ。

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約20年前に確立!SPAとフランチャイズの融合ビジネス

約20年前に確立!
SPAとフランチャイズの融合ビジネス

自社養鶏場で育てた鶏肉が低価格で並ぶ

 神戸物産はこのように独自化された品揃えをどのようにして実現しているのだろうか。また、なぜNBに頼らずとも高い販売力を実現できているのだろうか?

 1980年代に小さなスーパーマーケットの経営からスタートした神戸物産は、90年代、中国で立ち上げた自社工場で製造した商品を欧米で販売する製造卸売業に進出。そこから着想を得た創業者の沼田昭二氏が、製造卸売業と小売業を組み合わせたビジネスモデルを考案。これが業務スーパーのはじまりである。どこでも買えるNBを販売していては規模の大きいスーパーにかなわないし、価格競争に陥り利幅も稼げない。一方、自社でコストコントロールした商品であればNBより低価格で販売できる上、利幅も残すことができる。SPA(製造小売業)という言葉が一般化する前、いまの食品小売業がめざすべき姿を20年先取りしたビジネスモデルを開発したのである。

 20003月からは、「業務スーパー」のフランチャイズチェーンの展開をスタート。直営で展開していたのでは、経営資源を出店コストにも振り分けねばならず、当時の企業規模では大きくなるまでに時間が掛かっていたであろう。自らはFCの本部として、製造とFCの運営管理に注力することで店舗網を効率的に増やしていった。とくに低価格を訴求できる業務スーパーは国内景気の低迷も追い風になった。

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いまや女子高生も来店する、それが業務スーパー

いまや女子高生も来店する、業務スーパー

 2008年以降は、製造業としての性格が色濃くなり、国内の食品メーカーを次々と手掛けていった。現在では自社工場に加え、グループ会社1320工場を有するまでになった。

 また、業務スーパーで近年、存在感が増しているのが直輸入の海外商品である。業務スーパーで取り扱う商品のうちアイテム数ベースでは1/4ほどがこれら輸入商品となっている。今年ブームが再燃した「タピオカ」も業務スーパーが取り扱う商品の1つ。台湾から直輸入する「インスタントタピオカ」「タピオカドリンク(ミルクティ)」は入荷したらすぐ売り切れる人気商品だ。もちもち食感が特徴のブラジルのパン「ポン・デ・ケージョ」や台湾のB級グルメ「葱抓餅」など、一般のスーパーでは買えない商品が並ぶ。低価格、おいしさ、珍しさを意識する結果、「業務スーパーに行けば面白い商品がある」として、最近では女子高生などの来店も増えているという。

 独自の「食の製販一体体制」とFC展開を両輪に、新しい客層を増やしながら、強みを増す神戸物産の“競争しない”競争戦略。消費者の財布のヒモが固くなる増税後、さらにその勢いは増すことになりそうだ。

神戸物産の最新戦略、商品開発・輸入商品戦略、ローコストを実現する店舗オペレーションの秘密、新たに強化する総菜について、「ダイヤモンド・チェーンストア」9月1日号特集「神戸物産 競争しない独走経営」で詳細にわたって掲載!
沼田博和社長のインタビューでは、強さの秘訣と今後の事業戦略、展望について詳細に語っていただいた。