建材メーカーとして、日本の住宅づくりを支えてきた大建工業(億田正則社長)が、「住宅用建材のメーカー」から「建築資材の総合企業」への成長をめざしている。その一環として、リフォームの強化に取り組む。同社の執行役員 特需営業本部 本部長 内海(うちうみ)健一氏に、新たなリフォーム市場創造のために、ホームセンター(HC)との協業を推進するねらいと戦略を聞いた。
HCはリフォーム強化のための重要チャネル
──2020年の東京オリンピック開催に向けて、建築業界全体が好調な動きを見せていますが、住宅の新築着工件数は確実に減っています。
内海18年度の新築住宅着工件数は約95万戸ですが、それが25年には70万戸台にまで落ち込むものと想定しています。当社の長期ビジョン「GP(グロウプラン)25」では、それら厳しい環境下においても勝ち残ることをめざし、従来の「住宅用建材のメーカー」から、「建築資材の総合企業」に成長することを25年のありたい姿として描いています。19年度から始まる中期経営計画セカンド・ステージでは、「成長戦略の加速」と「経営基盤の強化」を基本方針として掲げ、「GP25」の実現に向け重点市場を見極めながら事業活動を展開しています。
具体的に挙げると、1つは公共・商業建築分野です。高齢者施設や幼稚園・保育施設、病院、学校などに向けた商品開発・提案を強化していきます。そして、もう1つが住宅リフォーム市場の強化です。従来のリフォームはキッチンやバス、トイレといった設備機器の入れ換えが中心でしたが、当社がターゲットとするのはお客さまの好みや生活スタイルに合せて住空間全体をよりよくして価値を高めるリノベーション需要です。そしてそのニーズを持つお客さまを呼び込むことができるのがHC。今後、HCをリフォーム強化のための重要なチャネルとして位置づけ、HCとの協業を進めていきたいと考えています。
──小誌の6月15日号の特集で主要HCのトップに取材しましたが、各社が厳しい状況下で同質飽和化からの脱出をめざし、旗き幟し鮮せん明めいになったと感じました。その中で、プロ需要をねらうBtoB(対業者)を強化するHCも出ています。
内海 他社との差別化を考えるなかで、リフォーム強化や、建材を本格的に扱ってプロ需要を取り込んでいこうというHCも出てきました。リフォームでは、HCは一般消費者だけでなく、工務店などのプロ顧客も取り込んでいます。BtoBについても、プロにもわかりやすい売場づくりやどうしたら売上を伸ばしていけるのか、HCと一緒にアイデアを出し合いながら取り組むことで、当社もHCとともに進化したいと考えています。
──もちろん、BtoC(対消費者)であるHCのリフォームコーナーへの提案も強化していくのでしょうか。
内海 HCのリフォームコーナーは、ペット用品や園芸用品を買いに来たお客さまが気軽に入ることができます。つまり、リフォームはまだ先のことと考えている消費者が「キッチンを変えたい」などと思わせる、潜在需要を掘り起こす場となり得るということ。ただし、お客さまが望んでいるのは、単にキッチンというモノを取り換えることではなく、キッチン空間を快適に変えることです。ところが、そういう空間づくりの提案ができているHCはそれほど多くはないように思えます。当社は、各HCと取引がある住設メーカーなども含めて、ともにお客さまの求める快適な空間を実現できるリフォーム提案を行いたいと考えています。HCという消費者にとって身近な場所で選択肢を増やすことは、顧客満足度が高いリフォームの実現に直結するはずです。
HCにはそれぞれの個性があります。当社は、各HCの特徴を把握したうえで、HCのオリジナリティを活かせる提案を行う方針です。ご相談があれば、ぜひ当社のリテール営業部にご連絡ください。東京と大阪に営業所を、名古屋・福岡には営業スタッフを配置していますので、必要に応じてHCの担当者さまと密接に情報交換させていただきます。また、収納、子育て、ペットというようなキーワードごとの空間提案や解決策の相談にも対応いたします。
さらに、お客さまのニーズに合ったリフォーム商材を新たに生み出すことも、当社の重要な使命。商品開発にもいっそうの進化が必要だと考えています。
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HC向けの省施工商材やHCの人材育成支援も強化
HC向けの省施工商材やHCの人材育成支援も強化
──商品開発のポイントはどんなところですか。
内海 今、大工さんが激減し、より簡単に扱え、施工できる商材が求められています。また、運賃もどんどん上がっています。それを考慮すると、現在提供している長尺の商材には使いづらさが伴います。マンションのエレベーターに入るような、もっと短い商材をつくらなければなりません。だれもが扱いやすい省施工商材をつくり、ジャストサイズにプレカットして、最終的にはプラモデルをつくるようなイメージの商品開発も必要でしょう。省施工を追求することは、プロユーザーだけでなくエンドユーザーの満足度向上にもつながるものと考えます。
たとえば、お客さまがHCに家の図面を持ってきたら、HCは現場が図面どおりか確認して、当社がその家に合わせてカットした商品を提供する。そうすれば、やる気があって器用な人なら、自分でリフォームすることも可能になるのではないでしょうか。
──現在のHC向けの重点商品を教えてください。
内海 国内の木質系床材市場において27%というトップシェアを頂いている当社は、多様な顧客が来店するHCに対し、機能、性能、色柄において幅広い商品を提供することができます。省施工商品では、「吸着フローリング」や床暖房向けの上貼りリフォーム用床材「サーモプラス」などがあります。ドア材では、既存のドア枠に付けられる「アウトセット吊戸」と「サイズオーダードア」(下記参照)をラインアップしています。また、ここ数年、提案を強化している壁材では、深掘りでシャープな陰影と素材感のある意匠が魅力の「グラビオエッジ」(写真参照)が一押しです。また、当社は防音建材に定評があり、たとえば吸音性能に優れた、空気層に充填する吸音材「吸音ウール」などもお薦めです。
──今まで、HCはセルフサービスが基本でしたが、これからはコンサルティングも必要で、人づくりがますます重要になります。
内海 当社はHCの店舗担当者向けに商品の研修会を適時開催し、商品知識強化の支援はもとより、効果的な商品訴求方法も提案しています。工務店などのプロでも、何でも知っている人ばかりではありません。たとえば、ペットを飼っている家に最適な床材を教えてくれる人が売場にいれば、お客さまは安心です。HCの人材育成につきましては、当社は引き続き支援させていただきたいと考えております。
8月29日から始まる「JAPAN DIYHOMECENTER SHOW」でHC向け商材を展示
大建工業は、8月29日~31日まで、幕張メッセ国際展示場(千葉県千葉市)で開催される「第55回 JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2019」に出展する。同展示会では、3コマのブースを使って、意匠性のある壁材の「グラビオエッジ」、既存のドア枠に設置できる「アウトセット吊戸」と、HC向けのオリジナル商品で、1㎜単位でオーダー対応できる「サイズオーダードア」などの室内ドア、防音建材の「吸音ウール」など、HC向け商材を展示する。「サイズオーダードア」の展示では、POPによる特長紹介や一般的なナチュラルカラーとは一線を画する独創的な色柄の見本を付けるなど、実際にHCに提案している売場づくりを再現する。