前回、ファストファッションの共通項を指摘した。彼らは中産階級の勃興した地域を中心に世界市場をターゲットとする。だから商品構成は全方位型ターゲットだし価格も低価格帯にする。ただ類似の商品では差別化できないため、一部のコンセプチャルな商品、目立つ差し色、特徴ある店装とVMDによって、単品で見たらどのブランドか判別がつかないようなシンプルなシャツでさえ特徴的に見せてしまう。これによりブランドアイデンティティーを高め、消費者の好みにフィットさせ支持を得ることで、どの国や地域でも通用するように仕立てている。では、日本のショッピングセンター(SC)にこのファストファッションを誘致することでどのような影響が生じるのか。今回はそのメリットとデメリットを含め解説したい。
ファストファッションに対するSCの勘違い
ファストファッションの共通項は冒頭で指摘した通りだ。ブランドごとにテイストが全く異なるように見える一方、その一つ一つを見ると非常にシンプルであり、サイズも豊富にある。そして低価格。最近では「3点目無料」というプロモーションも目に付く。
要するに年齢・性別・年収を問わず誰もが着られ、サイズさえ合えば高齢者でも十分着用できる、消費者にとって利便性の高いブランドである。
ファストファッションを「流行やトレンドをいち早く取り入れ、それを短期間で生産し店頭に並べる業態」と説明されることも多い。そのため、SC担当者は、ファストファッションを誘致することで「人気の、トレンドの、差別化されたテナント」がSC内に入ったと思ってしまう。場合によっては「地域1号店」などと喧伝する。
一概に間違いではないが、これではファストファッションを正しく理解していない。
ファストファッションは、「老若男女オールターゲットで、日常的で、かつシンプルな商品を少しだけ差別化し、“低価格”で販売する洋服ブランド」と理解する方が正しい。
ファストファッションを誘致する局面
SCがファストファッションを誘致するタイミングは、①新規SCの開業時、②空室の穴埋め、③テナントのスイッチ、④リニューアル時、この4つになる。
①SCの開業時とは新規開発の段階でファストファッションを誘致する、言わばSC開業時のスターティングメンバーの一人になる。それに対し、②、③、④は既に開業したSCであり、ここでの誘致は「遅れて参加」ということになるわけだが、この2つは、全く違う現象をもたらすことになる
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