御社は大丈夫!?ナンチャッテ直接貿易が原価を押し上げている!
全3回にわたって、「アパレル業界のフィクサー商社の実態に迫る」をテーマにお届けしている。前回は、単なる問屋機能としてしか認知されてこなかった商社不要論に対して、アンチテーゼを示した。今回と次回の2回にわたって、商社不要論から商社活用論に産業界の論点が移ってきている様を解説したい
誤解2「商社を外せば安く商品を仕入れられる」
これは、「ものづくり」を軽視した典型的なバズ・ワードだが、本件の結論はすでに出ている。それは、「単なる商社外しはアパレル企業にとってメリットはない」だ。むしろ、先進的なアパレルは「商社との取り組みの再構築」へと意識が変わっている。
例えば、「当社は直接貿易を拡大しています」という企業は多いのだが、よくよく調べてみると、商社業務を工場が代行し、単に支払いを外貨送金しているだけというケースが多い。このような指摘をすると判で押したように「うちは違う」というのだが、実際に海外の工場ラインまで見に行って、生産工程管理の細部まで随時確認・管理しているアパレルは数社を除いて皆無である。せいぜい年に数度、納品間際に出張にでかける程度。海外のあらゆる拠点に人間を貼り付け、24時間体制で生産管理を行う商社のチェック機能とは雲泥の差がある。現に、私自身、商社で働いていたとき、アパレルが工場を見に来るというものだから、先回りしてラインを変更し頑張って生産をやっている演出した経験は数度ではない。
さらに酷いケースになると、「テーブルメーカー」といって、実際は工場など持たない(元)工場が、いつしか、第三国に生産拠点をアウトソーシングし、日本の商社の役割をそっくり真似しているだけということもある。今は、日本人と中国沿岸部のエリート人材の年収比較をすると、日本人より中国人の方が高給だから、こうしたケースの場合当然ながら原価率は下がらない。
腕のたつ商社マンであれば、商品を見ただけで原産地、FOB (海外工場出し値)、CMT(工場利益率)を瞬時に計算できるし、さらに有能な商社マンであれば、商品を見ただけで、原料を一から組成しなおし、例えば、合繊繊維の染色色差や物性特性を利用し、特殊な加工を組み合わせ、オリジナルよりさらに付加価値を高めた原材料をオリジナルの半値で作り直すこともできる。商社の重要な機能の一つに、複数の中小アパレルの小ロットオーダーをまとめ、工場稼働率を高めることでトータル生産コストを下げるという機能もある。
輸入時にローンを使って資金回収を遅らせ、在庫の滞留期間を流動化をさせるファイナンス機能も持っている。こうした、業務はあまり表にでてこないため、ほとんどその実態は知られていない。直貿化といって、商社を外した瞬間キャッシュフローが悪化するというのはよく聞く話だ。
次のページは
製造原価の安さを追求して調達先を変える「南下政策」は限界。ではどうするか!?