ツルハホールディングス(北海道:以下、ツルハHD)がウエルシアホールディングス(東京都:以下、ウエルシアHD)の売上高を上回り、ドラッグストア業界売上高首位に躍り出た。「20倍のビジョン」を掲げて規模拡大を推し進めてきたツルハHDは、2024年5月期に3000店舗、売上高1兆円をめざす。
業界首位の座は流動的
「売上高が一位になったのは、素直にうれしい部分はあるが、一時的なことだと理解している」
ツルハHD代表取締役専務の鶴羽順氏はこう話す。
同社の2019年5月期連結業績は、売上高が対前期比16.2%増の7824億円、営業利益が同4.0%の418億円、経常利益が同4.1%増の433億円、当期純利益が同0.1%増の248億円と増収増益だった。
ウエルシアHDの2019年2月期連結売上高は7791億円であり、ツルハHDが約33億円上回ってドラッグストア業界売上高トップに躍り出た。
DgS業界では、2017年に長らく売上高トップに君臨してきたマツモトキヨシホールディングス(千葉県)がウエルシアHDに売上高で超され、首位交代があったばかりだった。
現在、マツモトキヨシHDとスギホールディングスが、ココカラファイン(神奈川県)との経営統合にそれぞれ意欲を示しており、業界首位の座は流動的だ。
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「20倍」ビジョンの内訳とこれまでに達成してきた「20倍」ビジョン
「20倍」のビジョンを掲げ規模を拡大
ツルハHDはどのように規模拡大を推し進めてきたのか。
同社が100店舗を達成したのは1989年(平成元年)。100店舗達成の目標を掲げたのは北海道にまだ5店舗しかなかった頃だ。
ツルハHDの鶴羽樹会長は次のように振り返る。
「当時、ツルハは『20倍』のビジョンを掲げていました。(中略)従業員もまだ少なく片手で数えられるほどで、薬剤師とパートタイマーさんが店を支えていました。それにもかかわらず、当時の鶴羽肇社長(現ツルハ名誉会長)は、『北海道に100店舗つくる』という大きなビジョンを掲げたのです。きっとだれもが『できっこない』という感覚だったと思います。しかし僕はこの性格ですから、社内でも取引先でも、さらにはマスコミにも、そのビジョンを常に口に出して言っていました(笑)。やはり口に出すことは大切で、従業員もそれに乗せられてか、『やるぞ』という雰囲気で盛り上がっていきました」(『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌2019年3月15日号)
その後、ツルハは50店舗を達成した段階で「関東以北に2011年5月までに1000店舗」のビジョンを掲げた。東日本大震災の影響で1年遅れたが、2012年に1000店舗を達成している。
ツルハHDはM&A(合併・買収)にも積極的で、2017年9月には静岡県でDgSを展開する杏林堂薬局の完全親会社、杏林堂グループ・ホールディングスの株式51%を取得。杏林堂薬局と杏林堂 GHDを連結子会社化した。そして18年5月には愛知県でDgSおよび調剤薬局を展開するビー・アンド・ディーの完全親会社、ビー・アンド・ディーホールディングス(愛知県)の全株式を取得し、子会社化している。
ツルハHDの中期目標は、M&A込みで2024年5月期に3000店舗、売上高1兆円だが、北海道札幌市の本部内に貼り出しているのは「目標世界20,000店 売上高6兆円」。同社の規模拡大を支える「20倍」のビジョンは継続している。