羽田未来総合研究所社長(元三越伊勢丹社長)が仕掛ける「羽田空港アップデート戦略」とは?
価格に「ウィル」を込めるのが小売の基本
――2023年はどんな一年になるとみていますか。
大西 コロナ前は、インバウンドの来日観光客が約3千万人いて、その経済効果は 約4.8兆円ありました。
しかし、これから3千万人まで回復するかというと、それは難しいとみています。観光客の4割、約1千万人を占めていたのは中国人ですが、2022年には中国・海南島に広大な免税店がオープンしていますし。
ただ、観光客一人当たりの経済効果が15万円だとすると、それを30万円にすることは可能だと思います。一泊200万円も300万円もする外資系の高級ホテルも満室と聞いています。富裕層に対してどうアプローチするかが、インバウンド回復のポイントになりますね。
――今の日本の小売業全体についての所感はありますか。
大西 昨今の円安や原材料価格の高騰を受け、「コストが価格に転嫁され物価が上がった」という論調がメディアで報道されています。しかし、私は「価格転嫁」という言葉自体に違和感を持っています。
未来総研の地方創生プロジェクトの一環で、鹿児島の日本ミツバチのハチミツを120グラム1万円で販売していますが、これまでに2022年度分の在庫が完売しました。そうそうたる料理人やパティシエもそろって「今まで食べたことがない」と絶賛してくれました。「原価の価格転嫁」の発想では、1万円という価格は付けられません。
「いいものを、ちゃんとした価格で売る」。前職からずっと言い続けてきたことです。いかに価格に「ウィル(意志)」を込めるか。これが小売業にとって最も大事なことではないでしょうか。