ゴールデンウィーク(GW)目前にして営業日ベースでの「平成」最終週入りの4月22日(本稿執筆時点)は、東京都心・名古屋市・大阪市などで今年初の夏日(=1日の最高気温が25℃以上になる日)となった。早くも初夏の陽気となる中、今日も食品スーパーに少々思いを馳せるのであった。
企業を業績別に4つに分類する
4月になり、食品スーパーを含む上場小売企業の決算発表が続いている。2018年度(2019年2月期・3月期)実績を概観・総括するには、5月に発表される3月決算企業の開示を待つ必要があるので、今はちょうど折り返し点だ。
決算分析にはいくつか手法があるが、昨年春に発表済みの2017年度(2018年2月期・3月期)実績を用いて、多くの企業をざっくりと概観する見方を紹介したい。
筆者が用いるのは、企業業績を企業規模の拡大と投資効率改善の視点から、増収率(=規模拡大)と総資産経常利益率(ROA)の改善幅(=効率改善度)とで4ポジションに分類するものだ(図表1)。効率改善と規模拡大を両立させているか、という成長の健全性を示している。
拡大路線を歩み効率を悪化させている企業群、負け組候補となりつつある規模縮小・効率悪化企業群、そしてオペレーション改善や商品開発に注力し、粛々と効率改善を果たす企業群に分類できる。
具体的には【Ⅰ】「拡大再投資」(増収+ROA改善)、【Ⅱ】「先行投資負担」(増収+ROA 低下)、【Ⅲ】「リストラ体質改善」(減収+ROA改善)、【Ⅳ】「縮小均衡(縮小&収益率低下)」(減収+ROA低下)である。
【Ⅰ】「拡大再投資」は企業規模拡大と投資効率改善を両立させていることを示し、投資回収期入りのポジションと位置付けられる。
【Ⅱ】「先行投資負担」は費用先行型の局面で拡大フェーズの初期段階に位置づけられる。
【Ⅲ】「リストラ体質改善」は不採算店舗の閉鎖をはじめとしたダウンサイジングによって収益性を改善している状況を示す。
【Ⅳ】「縮小均衡」は業容縮小や資産圧縮に見合った収益改善が果たせていない状況を示し、抜本的な構造改革や財務政策、同業他社からの支援などが求められるポジションに位置づけられ、実際、【Ⅳ】に位置した企業は業界再編の対象となるケースが多い。
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実際に、SM各社の業績をプロットすると、こうなる!
再編対象企業が一発で見える
上記をふまえて、上場食品スーパー各社の2017年度実績を見ると、図表2の通りである。
グラフを見る限り、各社とも4つのポジションに分散しており、各社が抱える課題や取り組み状況は一様ではないことが伺える。ベルクやハローズ、ライフコーポレーションなどをはじめとして、単年度で見るとROA低下だが一定の増収率をキープしている食品スーパー企業が少なくなく、こうした食品スーパー企業は着実に成長戦略を推進していると推察される。
一方で、減収あるいは微増収のまま、ROAが大きく低下している食品スーパー企業群も散見される。単年度の実績のみで見るのは乱暴であることを断った上でのコメントであるが、前述の通り、このポジションに位置した食品スーパー企業は業界再編に関係することが多い。
実際、図表2の当該ポジションに位置する食品スーパー企業においては、東武ストアが上場廃止となっている(2018年10月:東武鉄道による完全子会社化)。また、マックスバリュ東北・西日本・中部も当該ポジションに位置していたことも興味深い。2018年10月にイオンが食品スーパー事業の改革を推進すべく、全国6エリアでの事業会社再編を発表し、その中核はマックスバリュ各社であった。
図表2は決して“予言の書”ではない。しかし、「縮小均衡」ポジションに陥った食品スーパー企業の経営者が相当の危機感を有し、思い切った戦略転換や抜本的な構造改革、あるいは大同団結に打って出る可能性が高いかもしれないことは容易に想像できる。
決算発表に際し、単年度業績の好不調が注目されるのは当然である。一方で、それ以上に各食品スーパー企業が(実績を踏まえて)どのような戦略や施策を打ち出してくるのかが重要で、それは好業績食品スーパーのみならず、業績苦戦食品スーパーであっても同様である。
さて、大型連休が明けると3月決算企業の決算発表が本格化する。2018年度決算(2019年2月期・3月期)が出揃ったとき、図表2はどんな変化を見せているだろうか。そして、「令和」時代の始まりとともに、食品スーパー業界はどんな展開になるのであろうか