「食の提案」で難局を乗り切る=ジョイス代表取締役兼社長執行役員 小苅米秀樹

聞き手:千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
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コストをかけても“品質”を届ける

──新しいコンセプトだから、新しい什器や照明を導入したり、まず外装・内装を変えるということではないのですね。

小苅米 そうです。重要なのは見える部分ではなく中身ですから、とくに従業員の方々の意識改革は抜きにしては何も始まりません。

 「食の提案型スーパーマーケット」ですから、従来の部門別の縦割り組織では対応できないことも、山ほど出てきます。縦割り組織からは、お客さまの食卓を飾るというメニュー提案は出てきませんから。

 たとえば、鮮魚売場の平台で鍋物の提案をしようとしたときに、以前は鮮魚部門の商品しか並んでいませんでした。しかしそれでは鍋物の提案にはなりませんから、青果、日配、加工食品なども並べなければいけません。

縦割り組織を壊すなかから生まれてきた「サラダアイランド」のコーナー縦割り組織を壊すなかから生まれてきた「サラダアイランド」のコーナー

 それを試行錯誤しながら、なんとか実現させようと努力しています。縦割り組織を壊すことは、各部門の長にとっては面白いことではありません。はじめのうちは抵抗や反発もありましたが、徐々に理解度は深まっています。

 三関店では「サラダアイランド」と称し、魚や肉を使ったいろいろなサラダを提供するコーナーを展開していますが、これもこの取り組みの一環です。これまでの考え方で各部門がばらばらに動いていたならばできませんでしたし、まだまだ中身的に改善の余地もありますが、いろいろな分野でさらに推し進めていこうと考えています。

──総菜売場では「生肉から焼いた焼き鳥」を1本100円で販売しています。

小苅米 そうですね。われわれも以前は、中国やタイで生産した焼き鳥を88円程度、安いときには58~68円などで販売していましたので、当初この取り組みは社内でも懐疑の声が上がりました。

 ところが実際にふたを開けてみると、オープン時には毎日1000本を売り切りました。1本を焼くのに15分位かかりますので、焼き手はフル稼働でも間に合わないほどの盛況で、現在もかなりの数の日販があります。

 つまり、商売の仕方によって、まだまだ売上や業績は変えられるということです。ですから社内では、「トライ&エラー」で構わないからまず実際にやってみよう、そして「1人の知恵より100人の知恵」を集めながらよりよいものを創りあげていこう、と話をしています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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