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イオンの「トップバリュ」に変化の兆し! カギは「スモールマス」への対応

イオン(千葉県)は9月28日、プライベートブランド(PB)「トップバリュ」の2022年度下期取り組み説明会を千葉県内で開催した。昨今の値上げ基調のなかで、価格訴求の対象としてフォーカスされることの多かったトップバリュだが、同説明会でしきりに強調されたのは「付加価値」「新価値創造」といったキーワードの数々だった。

開発コンセプトを大きく見直し パッケージデザインも変更

イオンはトップバリュのコンセプトを見直し、ラインアップの一新を図る

 「(トップバリュブランドの)コンセプトを明確にして、商品開発を進めていく」。説明会の冒頭で、イオントップバリュ(千葉県)の取締役ブランド&コミュニケーション本部長の和田浩二氏はこう切り出した。

 そのうえで、トップバリュブランドのタグラインとして「くらしにソリューション、トップバリュ」を、コンセプトとして「トップバリュは、お客さまのくらしにソリューションを提案し続ける『新価値創造ブランドです。』」を据えると発表。そのもとで3つの開発領域――①ヘルス&ウエルネス、②こだわり、③サステナビリティ4つの開発テーマ――①体の健康(自身・家族)、②ストレスレス/簡便・時短、③こだわり/楽しさ・驚き、④地球環境・地域貢献を設定し、これらに沿った商品開発を行っていくとした。実質的に、トップバリュのブランド戦略を大きく見直したといえる。

一目で価値が読み取れるよう、パッケージデザインも一新

 商品のパッケージデザインも大幅に変更する。パッケージの左側面に「ブランドロゴ」「商品コンセプト」「商品ベネフィット(商品の価値)」を明確に記した「価値訴求ラベル」を配し、一目でその商品の価値が理解できるようなデザインに切り替える。それに合わせて、新たなブランドコンセプトやパッケージデザインの変更を訴求するテレビCMの出稿、店頭でのPRなども強化する。

モニター調査のクリア基準を厳格化!

 品質の追求についてもさらに力を入れる。コロナ禍で休止していた消費者モニター調査を今年の5月から再開し、①絶対品質評価(ブラインドテストによる試食)で80%以上の評価(良い・やや良いの評価の合計)、②知覚品質評価(味・価格・容量などを含めた評価)でナショナルブランドのベンチマーク商品を上回る評価、の2つをクリアしたものだけを発売する。同様のモニター調査はコロナ以前も行っていたが、①のクリア基準を70%から80%に引き上げることで、お客から支持される品質を追求する方針だ。

 また、21年4月に開設した「従業員コールセンター」の活用もいっそう進める。同センターは、全国約57万人のイオングループ従業員から、トップバリュ商品に関する提案や要望、意見を受け付ける専用のコールセンター。和田氏によると「開設からおよそ1年半で、約2000件もの提案が寄せられている」という。実際に商品規格の改善につながった事例も出てきており、お客だけでなく現場で働く従業員の声にも耳を傾けることで、今後もトップバリュ商品のさらなるブラッシュアップを進めていく。

「スモールマス」をとらえた商品開発を志向へ

 こうした新たな開発コンセプトや開発体制のもと、実際に下期から新たな商品を順次投入していく計画だ。

 なかでも力を入れるのががチルド総菜シリーズ。中食需要が高まるなかでここ2年間で売上が1.3倍に伸長しているという同シリーズを「全面刷新」し、よりおいしさを追求した商品を展開していく。

 同シリーズの中でもとくに人気の高い「プロのひと品」では、日本料理店「分とく山」の野崎博光総料理長、イタリア料理店「アクアパッツァ」の日髙良実オーナーシェフ、中華料理店「慈華」の田村亮介オーナーシェフと、いずれもミシュランの星付き有名料理店のシェフが監修した本格的な味わいのメニューを展開する。

有名シェフが監修する「プロのひと品」のラインアップも拡充

 このほか、コロナ禍で健康志向がさらに高まったなかで、「ヘルシー」を軸とした商品ラインアップの強化も図る。

 たとえば、イタリア産の白トリュフエキスオイルと黒トリュフ塩を使った「ミックスナッツ」、ドライフルーツに最適な品種を選定した「ドライマンゴー」など、原料と味付けにこだわった商品を展開。また、添加物フリーの商品として、トウモロコシと揚げ油と塩だけで加工した「トルティーヤ」、プロテイン独特の匂いを抑えた「プロテインヨーグルト」などを順次発売していく計画だ。

ヘルシーを軸とした商品の展開も強化する

 イオントップバリュ取締役商品開発本部長の小野倫子氏は、「消費者のニーズが多様化するなかで、『スモールマス』に合わせていろいろな商品をつくっていかなければならない。お客さまの日々の変化に合わせて、商品を進化させていく」と力を込める。スモールマスをとらえた商品開発を継続し、トップバリュのブランドパワーを向上させることはできるか。その手腕が問われる。