コロナ禍のストレスで
「刺激を求める」人が増加
新宿・大久保公園で夏の風物詩として開催されてきた「激辛グルメ祭り」が、3年ぶりに復活し話題を集めた。激辛グルメブームのなか、次はどんなメニューが登場するのか、筆者も楽しみでならない。
長引く新型コロナウィルス感染の拡大によりストレスも最高潮に達し、激辛グルメブームはさらに拍車がかかっている。2021年4月に実施したホットペッパーグルメ外食総研でコロナ禍における激辛グルメニーズについての調査結果でも、その傾向が顕著にあらわれている。
コロナ禍における激辛グルメニーズについて「コロナ禍とそれ以前を比較して、外食の自粛が続き刺激を求めるようになったか?」という問いに対して、辛い料理が好きな人のうち43.6%が「そう思う」と答え、辛い料理が嫌いな人の31.7%の結果と10ポイント以上も差をつける結果となった。
そもそも辛い料理が好きな人は、刺激を求める傾向が強く、自粛などストレスを感じるときにその傾向が強くでたのではないだろうか。
また、「コロナ禍とそれ以前を比較して、辛い料理を食べたいと思う頻度が増えたか?」という問いに対しては、辛い料理が好きな人の22.2%が「増えた」と答え、辛い料理好きの5人に1人が、コロナ禍において辛い料理を食べたい頻度が上がったと答えている。つまり、辛い物が好きな人はコロナ過において、さらに激辛グルメを求めているということが言えるのだ。
ドラマや映画の人が
ブームを後押し
日本における激辛ブームの歴史は1980年代までさかのぼるが、それについては過去の記事ですでに多々記述をしているため、そちらをご覧いただきたい。
そんななかでも今注目したいのは「韓国グルメ」だ。韓国グルメの日本におけるブームは、2002年に空前のブームとなった韓国ドラマの影響によるものが大きいのではないだろうか。ドラマの人気に加え、海外旅行の渡航先としても人気だ。渡航先の人気とグルメトレンドの親和性は高いため、この頃から日本で韓国料理の人気が上昇し、今となってはグルメジャンルに欠かせない存在となり、韓国本場でしか食べられないようなメニューさえも日本で楽しめるようになっている。
そして、昨今は02年の頃をはるかに超える「韓国ドラマ」「韓国映画」ブームと言っても過言ではない中、再び韓国料理が脚光を浴びている。
「韓国料理」といえば、激辛のイメージが強いが果たしてそれだけなのだろうか。ホットペッパーグルメ外食総研は22年3月、辛い物好きの人を対象に食べてみたい辛い韓国料理を、また対象を限定せずに辛くない韓国料理を調査し、人気ランキング形式で発表した。その結果をみていこう。
本場のメニューが
もはや定番に
まず、独自でピックアップした「辛い韓国料理」18品の中から、辛い料理が「好き」「どちらかといえば好き」と答えた555人をもとに「食べてみたい辛い韓国料理」を聞いた。
上位には、誰もが知っている韓国料理というより本場で人気のありそうなメニューが並んだ。1位は、「チムタック」だ。こちらは53.2%の支持を集めており、鶏肉とサツマイモから作る春雨を煮込んだ料理で、甘辛いたれが人気だ。続いては「ナクチポックン」(52.4%)で、こちらは手長ダコを唐辛子味噌とニンニクで炒めた激辛料理。そのほかにも「イカフェ」「プルダック」「カムジャタン」などが上位にランクイン。いずれも、名前だけ聞くとどんな料理か想像がつかない。しかし、日本人にはなじみ深い食材と、「甘辛」という日本人に好まれやすい味付けのものである。
SNS映えで話題の
「パネチキン」が上位に
続いて「食べてみたい、辛くない韓国料理ランキング」を紹介したい。こちらは、辛い物好きに限定しない1035人に、独自に選んだ19品の中からランキング調査を行った。
「食べてみたい」という回答が一番多かったのは、47.8%の支持を集めた「パネチキン」だ。こちらはバケットの器にたっぷりと注がれたチーズ、トマト風味のフライドチキンを絡めながら食べる料理で、その見た目のインパクト、チキンやバケットをチーズにつけながら楽しむエンタメ性などがSNSでも話題となっており、上位にランクインした。そのほかにも、ハニーマスタードソースやスイートチリソースなどで食べる韓国チキンなど、昨今の韓国ドラマの中でおなじみのメニューが並んだ。
このように、韓国料理の激辛グルメは、定番以外のメニュー、さらに激辛ではないメニューも親しまれるようなっていることが今回の調査で明らかになった。その理由として、前途した通り、海外グルメトレンドは、ドラマなどメディアの影響と渡航先の人気ランキングとの親和性が高く、様々な韓国料理を目にし、実際触れる機会が増えたことが影響しているといえるだろう。
また海外渡航の規制が緩和されてきている昨今、人々の海外旅行ニーズは上がっていると想定される。そんな今だからこそ、「海外に行きたい」=「現地のグルメが食べたい」というニーズが上昇し、その中でも人気の韓国料理はさらに注目を集めるのではないだろうか。1日も早く海外への渡航が以前のように制限なく自由にできるようになり、多くの人が世界中のグルメに気軽に触れられる世の中に戻ってほしいものだ。
【執筆者】
有木真理(リクルート『ホットペッパーグルメ外食総研』上席研究員)
㈱リクルートライフスタイル沖縄の代表を務めるとともに、ホットペッパーグルメ外食総研の上席研究員として、食のトレンドや食文化の発信により、外食文化の醸成やさらなる外食機会の創出をめざす。自身の年間外食回数は300日以上、ジャンルは立ち飲みから高級店まで多岐にわたる。趣味はトライアスロン。胃腸の強さがウリで、1日5食くらいは平気で食べることができる。