コスモスの中部、関東積極出店で「デス・バイ・コスモス」が間近に迫る理由

解説・文:柳平 孝 (いちよし経済研究所主任研究員)
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コスモス大

コスモス薬品が営業減益に──。最新(22年度5月期)決算の内容がドラッグストア(DgS)業界をややざわつかせた。しかしそれは一時的な外部要因によるところが大きく、同社の成長スピードが鈍化したとはいえない。むしろ相変わらずの旺盛な大量出店によって日本各地のマーケットを侵食しており、結果として新たな再編劇を引き起こすなど、同社の影響力の高さは不変だ。決算数値をもとに、足元の経営戦略について分析する。

14年ぶりの営業減益も成長力はほぼ変わらず

 コスモス薬品の業績動向が注目されている。2022年5月期業績が営業減益に終わったためだ。営業減益は08年5月期以来14年ぶりであり、営業利益は対期初計画比でも約34億円の未達であった。

 22年5月期実績は連結売上高7554億円(同期より収益認識に関する会計基準を適用。実質ベースでは対前期比4%増)、営業利益297億円(同10%減)であった。ただし、営業減益の主な要因は、出店費用と水道光熱費の増加である。前者は新規出店数を期初計画の100店舗から120店舗に拡大させたためであり(=先行負担の増加)、後者は電力単価の急激な高騰の影響である。

 業績数値は一見、苦戦模様だが、コスモス薬品の成長力がスローダウンしたとは考えづらい。実際、営業面では既存店増収率は対前期比0.1%減、粗利益率は実質ベースで同0.1%ポイント(ppt)低下した20.0%と概ね横ばい推移である。コロナ禍を背景とした需要増加の反動減を考慮すると、堅調推移といえよう(21年5月期の既存店増収率は同2.4%増、粗利益率は同0.3ppt改善)。

 なお、23年5月期計画では、連結売上高8135億円(対前期比8%増)、営業利益300億円(同1%増)で、前提条件の既存店増収率は同0.4%増の想定である。新年度に入ってからの既存店増収率は、6月:対前年同月比1.5% 増、7月:同3.5%増、8月:同0.7%増、6~8月平均は対前年同期比1.9%増となっており、前出の計画に対して強含みで推移している(図表❶)。

図表❶既存店増収率の推移

大量出店による規模拡大続く 食品売上高構成比は約6割

 他方、大量出店の戦略は

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解説・文

柳平 孝 / いちよし経済研究所 主任研究員

1991年北海道大学経済学部卒、同年大和総研入社。小売業界アナリストとして、INGベアリング証券(現マッコーリーキャピタル証券)、日興シティグループ証券(現シティグループ証券)などを経て、2011年1月より現職。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員

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