高級ゴルフウエア「マークアンドロナ」、コロナ禍でも売上絶好調の周到な戦略
安売りはしない。希少性がファンの枯渇感をうむ
3つ目の魅力は希少性だ。定価で売り切ることを原則とし、セールやアウトレットにも頼ることがない。どんなヒット商品が生まれようとも商品の価値を保つために安易な追加販売は行わない。その結果として、ファンに枯渇感がうまれ手に入れたときの満足度が上がるのだろう。
「商品の流通を徹底的にコントロールすることで、高いプロパー消化率を維持している。この考え方は、私がセレクトショップを経営していた時から変わらない」(松村氏)
松村氏は大学卒業後に大手家電メーカーの営業マンとして勤務したという異色の経歴の持ち主だ。「パソコンがない時代からシステムに携わっていた」と言い、マークアンドロナのECサイトも自ら手がけ、軌道に乗せた。
27歳で脱サラし、アパレル経験ゼロから地元湘南に「自分が欲しいものを届ける」セレクトショップを立ち上げ、約10年間、店に立ち続けた。その間、アメリカやヨーロッパに洋服や雑貨や食品の買い付けに行き、時には壁にぶつかることもあった。「大手セレクトショップはどんな商品でも買い付けできるが、地方の小さなショップは相手にされないこともままある。店を続けるためには創意工夫するしかない。例えば、このTシャツは下げ札をこうデザインしなおしたらもっと魅力的に見えるとか。考えて努力して店を守ってきた」(松村氏
そうした現場経験は、松村氏独自のスキルとして開花していく。アパレルの輸入代理店事業をはじめると、現地のデザイナーにアドバイスする立場になったのだ。客の心がわかるからこそ的確なアドバイスができる。松村氏が口を出せば、商品は売れた。2004年のキューブ代表取締役に就任と同時に、渋谷区神宮前に拠点を移し、本格的にアパレルの卸事業をスタート。英国発のゴルフウエアブランドのコンサルタントや、欧米のインポートブランドの代理店事業をメインに展開し、会社の業績も順調に伸びていったが、「世の中にないブランドを創りたい」との想いを無視できなくなり、マークアンドロナを立ち上げることになった。