店長に売上責任を課さないのがチェーン理論、責任を持つのが個店経営

島田 陽介(島田研究室代表)
Pocket

「売上は店舗責任ではない」という画期的な組織論

 「個店経営」は、流通業の組織論に決定的な転換をもたらした。だが流通業に組織論という考え方をもたらしたのは、「チェーン理論」をもって嚆矢とする。チェーン理論がモデルとするウォルマート(Walmart)と日本のチェーンの唯一の共通点は、その組織論であることはすでに指摘した。

「個店経営」は、流通業の組織論に決定的な転換をもたらした(i-stock/Vorawich-Boonseng)

 その基本は、1つが「命令と服従」の徹底、2つがマーチャンダイザーとストア・マネジャーの2大スペシャリストの区別だった。この「チェーン組織論」の原則だが、実は忠実に実行されているとはいえないのである。

 チェーン組織論では、マーチャンダイザーの責任は、自ら担当する品種品目の店舗ごとの品揃えを決定し、それを店舗に命令し実行させ、その結果得られる「粗利益高」で評価される。そしてストア・マネジャーの責任は、マーチャンダイザーの品揃え命令を忠実に果たしつつ、店舗ごとの「売上高-粗利益高-コスト=純利益高」で評価されるということになっていた。ここでいうコストとは、チェーン各店舗当たりの人件費、作業コストである。

 これは画期的な組織論だった。なぜならこの組織論では、店舗に「売上高(あるいは粗利益高)」の責任はない、とされたからである(厳密には売上高を増やせば純利益も増えるから間接的責任は負う)。

 「店舗に売上の直接責任を問わない」というのは、小売業あるいは流通業の有史以来の新提案だった。それまですべての小売業・流通業は、店舗売場の最大の任務は「売上高を上げること」と考えてきたからである。店長の評価は、まず「売れたかどうか」で決められていた。チェーン組織論はそれを真っ向から否定したのである。

 もっとも、この大転換はチェーン理論を奉じるチェーン各社にも、実際に採用されることはなかった。チェーン理論を奉じている(と自認する)チェーンでさえ、これまでの「慣習」を捨てず、以前同様にストア・マネジャーの最大責任は「売上高」であり、現在もそうである。だが本論の目的は、その矛盾の指摘にあるのではない。

店長に売上責任を課す個店経営組織

 なぜなら、

続きを読むには…

この記事はDCSオンライン+会員限定です。
会員登録後、DCSオンライン+を契約いただくと読むことができます。

DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。

1 2

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態