止まらない市場縮小……スーツ専門店最大手の青山商事の戦略は?

棚橋 慶次
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希望退職と不採算店閉鎖で赤字を一掃!

 2022年3月期の青山商事は21年3月期に引き続き、コロナ禍に伴う緊急事態宣言・まん延防止措置の発令や消費マインド低下の影響を受けたものの、売上高は徐々に回復。収益認識基準変更前の売上高は対前期比3.8%増と、金額ベースで前期を45億円上回っている。

 主力のビジネスウエア事業の月次既存店売上高は、通期ベースで対前期112.4%だった。上半期は6、8、9月に前年割れとなったものの、下半期はすべての月で前年度を上回るなど、持ち直し傾向が強まっている。

 それらの増収効果に加え、粗利益率も改善。加えて、希望退職と不採算店舗撤退を軸とするコスト構造改革により、販管費を抑制し、前期144億円もの赤字を一掃した。なお、店舗数は、ビジネスウエア事業を中心に137店を閉鎖し、グループ全体で1605店まで絞り込んだ。

今期はオーダースーツを強化へ

 23年3月期の業績予想では、売上高が対前期比11.2%増/前期から185億円増の1845億円、営業利益が同170.5%増/同37億円増の 59億円、当期純利益が同77.6%増/同10億円増の24億円を見込む。

 コスト構造改革は一段落したため、店舗閉鎖も30店弱にスローダウン、今期は主力のビジネスウエア事業の成長性回復に舵を切る。同時に、収益性も回復したい。中長期的には、営業利益200億円以上(18年3月期以前の水準)が1つの目安だ。

 ビジネスウエア事業に関しては、付加価値の高いオーダースーツに注力する。具体的には、「SHITATE」「ULメジャーズ」「麻布テーラー」の3ブランドの取り扱い店舗を拡大。現在、296店舗の「SHITATE」対応店舗を450店舗まで拡大し、オーダー商品の売上高44億円(同68%増)をめざす。また22年にエススクエアードを買収し、全国的に知名度の高い「麻布テーラー」を手に入れたことでオーダースーツ事業強化が図られる。

 お手頃価格のボリュームゾーンについては、仕入れコストを抑えつつより高機能を訴求する。「THE SUIT COMPANY」に関しては、22年3月期までに固定費負担の重い一等地店舗の閉鎖に一定の区切りがついたため、今後は店舗オペレーションの効率化やパートタイマーへの切り替えにより収益体質の強化を図る。

 そのほかの事業については、収益性強化に向けて立て直しを図る。さまざまな事業を抱える青山商事だが、いずれの事業も利益面ではグループへの貢献は限られており、本業の立て直しは急務だ。

労働人口減少、リモートワーク普及……市場縮小は待ったなし!

 アパレル業界の中でも、スーツビジネスの事業環境は比較的恵まれていると言える。トレンドや流行にあまり左右されず、一定のサイクルで買い替え需要が期待でき、しかもお客は同じ店舗を利用し続けることが少なくない。また、定番商品の比率が高く、シーズンごとのバーゲンセールとも無縁だ。

 そうした事情もあって、新規参入するプレイヤーも少ない。スーツ量販店市場は、青山商事、AOKIホールディングス、コナカ、はるやまホールディングスの4社による独占状態になる。

 ただ、パイは年を追うごとに小さくなっている。働き盛りの人口が減り続け、1世帯当たりのスーツの消費額も減少の一途をたどっている。クールビズやウォームビズなどの浸透に伴い、ビジネスシーンでもカジュアルウエアを使う機会も増えている。さらにテレワークの普及もスーツ販売にはマイナス材料だ。

 縮んでいく市場でいかに魅力ある商品を提供し需要を喚起していくか。スーツ量販店最大手としての力量が問われる。

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