コスト増で揺らぐビジネスモデル、「100円」にこだわるセリアの打ち手は

2022/06/10 05:55
棚橋 慶次
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セリア(岐阜県/河合映治社長)が5月10日に発表した2022年3月期決算は、売上高が2080億円(対前期比3.7%増/前期から74億円増)、営業利益が209億円(同1.7%減/同3億円減)、当期純利益が143億円(同2.9%減/同4億円減)の増収・減益だった。

巣ごもり増収も、伸び率は鈍化

 コロナ禍における外出自粛などの影響で、濃淡を伴いつつも小売業界は全般的に苦境に陥った。そうした中で100円ショップは、巣ごもり需要という強い追い風が吹き、客足は堅調をキープしている。

 順調な経営環境下、セリアは2022年3月期、チャネルおよび商品戦略の強化をバネに、さらなる成長をめざした。

 チャネル戦略では、多店舗展開を推進すべく、複数テナントを所有するオーナーとの優先交渉や未開拓エリアの開発に取り組んできた。22年3月期の出店数は、137店舗(ロードサイド11・商業集積地37・インショップ89)にのぼる。ただし、ただしコロナ禍に伴う商業施設再開発計画の遅れなどもあり、出店数は2期連続で前期割れしている。

 商品戦略では、新規顧客層獲得を見据えた商品開発体制強化を図り、大阪に続いて東京のサテライトオフィスにも活動の場をひろげた。こうした努力が奏功し、22年3月期の売上高は前期を上回っている。

 ただ、売上高の伸びは鈍化傾向にあり、ここ数年1ケタ台後半以上を維持してきた伸長率は、1ケタ台前半にとどまった。

 加えて、既存店売上高は同2.1%減と前期実績を下回り、客数(同1.4%)・客単価(同0.6%)ともに低調だ。月別に見ても、前年度を上回ったのはわずか3カ月に過ぎなかった。

 なお事業部門別の内訳だが、セリアでは直営部門の売上高が全体の98.6%を占めており、フランチャイズや卸売はごくわずかにすぎない。アイテム別の売上高も、雑貨の比率が食品・菓子類などよりも圧倒的に多い(98.5%)のがセリアの特徴だ。

 利益面については、増収効果があった一方で積極的な店舗展開による販売スタッフ人件費および家賃負担の増加により、営業利益は前期からマイナスとなっている。

コスト増背景に今期は減益予想

 セリアは23年3月期の業績予想で、売上高が同4.2%増/同87億円増の2168億円、営業利益が同18.3%増/同34億円増の175億円、当期純利益が同18.9%減/同28億円減の119億円を見込む。

 売上高はキャラクターグッズ・アウトドア用品の伸長を織り込み、今期も過去最高更新を計画する一方で、既存店売上高はマイナスとなる見通しだ。

 利益面では2期連続で厳しい状況が続きそうだ。樹脂原料をはじめとした素材の値上がりや円安が圧迫要因となっている。同社は段ボール梱入り数を増やして輸送効率を上げたり、品質に直結しない梱包資材を見直したりと対策を打つが、コスト増を吸収するまでには至らないようだ。

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