“タブー”を新しい常識に 日本上陸10周年のフライングタイガーの生き残り戦略とは

2022/06/22 05:55
    両角晴香
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    日本用にローカライズ

     一方で、デンマークの文化が、日本人のライフスタイルにマッチしない点も少なからずあった。

     「ヒュッゲの概念をお客さまにお伝えしたくても、日本人にはなじみが薄い。またフライングタイガーが北欧出身であることはご存知でも、デンマークとは知らない方が多い。マス広告を打たないブランドでありながら、女性の認知度は5割程度と驚異的に高いが、 “知ってもらっている”という過信が、店をつぶすことになるまいかと危機感を抱いた」と話す松山 CEOは、停滞期にあたる2017年に縁があって同社に入社した。経営企画部で手腕を振るったのちに、現在はCEOの立場で、さまざまな改革を推し進める。「ブランドを存続・成長させるためには原点回帰し、ゼロからブランドの強みを生かすよう構造改革する必要があった」(同)

     ヒュッゲという言葉の代わりに、大切な人と楽しむ一時としてホームパーティーという切り口で啓蒙活動を行った時期もあったが、「パーティーは毎日開くものではないため、決して日常的ではない。そこで、主要ターゲットの見直しを行い、全方位型からファミリー層へシフトした。『お母さんが欲しいものってなんだろう』という視点で、パーティーグッズに加え、知育玩具やゲームなどファミリー向け商品の構成比を向上した」(同)

    世界初のタブー破りも

    いよてつ高島屋
    ポップアップストアから長期開催(Shop in Shop)に移行した愛媛県・いよてつ高島屋

     2015年頃からは都心部の既存店の売上が思うように伸びていないため、規模と立地の両軸で出店モデルの見直しも行い、ファミリー層が通いやすい郊外モール型への出店を強化した。テナントで借りられるスペースは限られため、標準店の売場面積は約150坪以上のところ、100坪未満の規模に縮小しての出店だ。

     また、将来の布石として、事業開発部を設置。全国で店舗のないエリアには、期間限定のポップアップストアを出店し、試験的にタッチポイントを増やして、新たな客層への販売機会を設けている。成功事例は、東京・足立区の北千住マルイストア。同店は20203月より約1年、ポップアップストアとして展開。好評を得たことからフロアを移動し、常設店舗化することになった。同店は、デンマーク本社がタブー視してきた50坪以下という小型店であるだけでなく、非ワンウェイ店でもある。

     「都心のワーキングママは多忙。一方通行の道なりに沿ってじっくり商品を物色する時間はなく、日本人の買い物は時短であることを伝えて、本社をなんとか説得した」(同)。フライングタイガーは全世界で約900店舗を展開しているが、『店舗はワンウェイであるべき』というタブーを破ったのは世界で初めてのことだったという。

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