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EC売上高574億円、EC化率30%超へ! アダストリア2022年2月期決算

アダストリア(東京都/木村治社長)が4月13日に発表した2022年2月期連結決算は、売上高2015億円(対前期比9.6%増/前期から177億円増)、営業利益が65億円(同756.1%増/同57億円増)、当期純利益が49億円(同56億円増、前期は6億円の最終赤字)だった。
ただし、コロナ禍前と比較すると、売上高(2223億円)、営業利益(128億円)、当期純利益(63億円)のいずれも2020年2月期の水準には達していない。業績回復には一定の道筋はつけたものの、いまだ途上にあるといえる。

主力ブランドが好調に推移、海外事業も伸長

 売上高概況から見ていくと、売上高全体の9割以上を占める国内売上高は、対前期比8.9%増の1886億円だった。ウィズコロナの定着とともにアパレル需要も持ち直し傾向にあり、主力のグローバルワークが1割を超える伸長を見せたほか、各ブランドとも前期を上回った。国内ECも積極的な投資が奏功し、EC売上高は対前年度6.8%の574億円に達している。

 海外売上高は、中国大陸・台湾・アメリカといずれも大きく伸長した。海外事業全体で通期の営業黒字を果たしている。

 チャネル展開に関してはスクラップアンドビルドを実施し、97店を出店する一方で69店を撤退した。同グループの期末における店舗数は1428店となっている。

 次に営業利益の概況を見ていくと、商品供給計画の適正化を通じた値引き抑制により、円安の進行・原材料価格の上昇を吸収し、粗利益率は前期から0.6ポイント(pt)改善の55.1%だった。

 販管費は、休業・営業時間短縮の緩和に伴う人件費(前期から4億円増)、家賃(同12億円増)上昇に加え、ECプロモーション展開による広告費負担(同9億円増)などもあり、50億円を超過。一方で、増収の寄与により、販管費率は2.2pt内輪の51.8%に収まった。以上の結果、売上高営業利益率は2.9pt改善の3.3%で着地している。

EC化率は30.1%に成長

 ここからは2022年2月期に同社が注力した、持続的成長に向けた主な取り組みを見ていこう。

 まず、WEB事業成長と自社ECの展開について。従来、アパレルはネットではサイズ・イメージがつかめないなどの問題からECとのマッチングが悪いビジネスとされてきた。2019年時点におけるEC化率も13.89%(経済産業省調べ、以下同)で、ECとの親和性が高い生活雑貨(23.32%)や家電・AV機器(32.75%)に比べると見劣りが否めなかった。ところが状況はコロナに伴う巣ごもり消費で一変。ITテクノロジー活用によるイメージ・サイズ問題の軽減・解消も手伝って、EC化率は一気に19.44%(2020年)に上昇した。

 従来からWEB事業に力を入れてきたアダストリアも、EC化を加速。2018年2月期1Qに15.4%だったEC化率は30.1%(22年2月期通期実績)に倍化、業界平均を大きく上回る。業界内EC売上ランキングでは、ユニクロに次ぐ2位の座をベイクルーズグループと競っている。

 同時に重点を置いたのが、自社サイト育成だ。ECモールに比べて集客力がネックとなる。だが、独自のブランディング発信には自前のサイトが欠かせない。アダストリアは、他業種(サンマルク)とのコラボやECサイトでの先行予約発売など、顧客の関心を集めるなどの対策を講じてきた。結果として、自社サイトのウエイトはEC売上高全体の半分以上にまで高まっている。

中堅レストランチェーンのゼットンを買収

 社内にノウハウの乏しい分野へ進出するために、一から人を育て組織を構築するのは時間がかかる。スピードが求められる現代においては、むしろ「買ってくる」のが得策の場合も多い。

 レストラン「アロハテーブル」などを運営するゼットンの買収も、非アパレル事業の迅速な展開を見据えてのことだ。あわせて、主力の「グローバルワーク」などでのカフェ併設も視野に入れる。

 ここ10年間でグローバル展開を一気に加速し、国内売上を超えるまでに海外事業を育て上げたユニクロとくらべると、海外売上比率が1割に満たないアダストリアの現状は見劣りがする。

 国内衣料市場の鈍化・長期低落傾向を考えると、海外進出加速は待ったなしの課題だ。そうした中、アダストリアがとくに重視するのが中国市場だ。ニコアンド上海2号店の出店が奏功したこともあり、中国大陸での売上高は前期から9割近く増加した。今後は中国での出店を継続すると同時に、東南アジアへの進出を加速するとしている。

中計目標、連結売上高2800億円

 2023年2月期の業績予想では、売上高が対前期比14.1%増の2300億円、営業利益が同52.3%増の100億円、当期純利益が同28.1%の63億円を見込む。

 アダストリアは「そこそこエッジのきいたお手頃価格ブランドのマルチ展開」を武器に、日本での存在感を高めてきた。今後は国内アパレル市場が縮小していく中で、成長持続のカギを握るのは、グローカル化を含めた海外市場での投資拡大・自社ECの展開加速、そして既存ビジネスにおける収益・成長性確保だ。

 同社は中期経営計画の中で、最終年度2026年2月期において連結売上高2800億円(うちEC売上高800憶円)、営業利益率8%と意欲的な目標を掲げている。果たして達成できるのか、今後に注目が集まる。