元ファストリ上席執行役員が明かす!店舗を日本一に導く手法 トーチリレー神保代表【前編】

聞き手:大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
構成:佐野佳代子
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業績低迷の店舗を日本一へ
秘策は「悩み」にあり

――トーチングの原点に、ファーストリテイリング時代、業績が振るわなかった「ユニクロ」のロードサイド店舗を月間総合評価で日本一に導いた功績があります。現場の悩みを集めたことが躍進のきっかけになったのですね。

神保 そのお店は関東郊外にあるごく普通の店舗で、私が本社からサポートで訪問すると、店長とスーパーバイザーの関係がうまくいっていないことが見えてきました。スタッフにも悪影響を及ぼし、業績も低迷していたのです。

 そこで私は、店長、スーパーバイザー、スタッフから徹底的に「悩み」を集めてみることにしました。「今の仕事で一番苦しいことは?」「それに対してどんな努力をしている?」「それでも変えられない部分はどこ?」と、それぞれに本気で向き合ったのです。

 大事なのは「あなたを苦しめている悩みについて一緒に向き合いたい」と、私のアドバイスではなく、目の前にいる個人の悩みを主役にすることです。そうすると、もともと自分事である悩みの解決に向けて動き始め、徐々に店舗での仕事、さらには店舗の業績までを、自分事として考えることにつながります。また、悩みの本質があぶり出されて、店舗改革の糸口も見えるようになります。

トーチリレー神保拓也代表
トーチリレー神保拓也代表

――個人を主役に、店長、スーパーバイザー、スタッフと向き合ったのですね。

神保 悩みを集めてわかったのは、「店舗をよくしたい」という思いは皆一緒なのに、言動が相手に誤解されて、わだかまりが生じていたことです。そこで店長、スーパーバイザー、スタッフそれぞれにアドバイスするとともに、その内容を全体にも開示しました。相手の悩みを知り、それに対する私のアドバイスを知ることで、お互いの理解がより深まります。悩みながらも努力している過程を皆で共有することで、組織は想像以上のスピードで成長していきました。

 結果的に、どん底だった店舗は日本で一二を争う店舗に生まれ変わりました。私がしたのは悩みを欲しがり、皆の心に火を灯した。ただそれだけなのです。

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聞き手

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。

最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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