巨額赤字の前期から黒字転換へ、イオンの21年度決算と来期の成長戦略を解説
ネットスーパー売上高750億円!黒字化も達成
さて、2022年2月期はイオンにとって5カ年の中期経営計画の初年度にあたる。中期経営計画では、「デジタルシフトの加速と進化」を重点戦略の1つとして掲げており、その中でもとくに注目を集めているのが、ネットスーパーの展開だ。
ほかの食品小売と同様に、イオングループでもネットスーパーは急成長している。イオンによれば、グループのネットスーパー売上高は19年度から年平均35%増のペースで伸長しており、22年2月期は750億円規模に成長。黒字化も果たしたという。
イオンの吉田社長は「日本の食のEC化率は3%程度と言われ、20~30%とされる中国やアメリカと比べて大きなポテンシャルを秘めている。オンラインデリバリーといえば、イオンを第一に想起してもらえるようにしたい」と意気込みを述べる。
ネットスーパー飛躍のカギを握るのは英ネットスーパー企業オカド(Ocado)との協業の取り組みだ。イオンは19年にオカドと提携を結んでおり、千葉県千葉市にネットスーパーの拠点となる「カスタマー・フルフィルメント・センター(CFC)」を稼働させることを発表している。同CFCは23年の稼働予定で、業績に影響してくるのは24年2月期からとみられるが、数千億円ともいわれる巨額投資の成果に注目が集まっている。
なお、イオンでは23年2月期に単年度で4500~5000億円の投資を計画している(22年2月期実績は3525億円)。投資の対象はオカドとの協業による次世代ネットスーパーのほか、ベトナムでの新規出店やスーパーマーケットの物流センター、セルフレジなどで、内訳は「店舗(日本)」が40%、「店舗(海外)」が30%、「デジタル・物流」が30%になる見通しだ。
23年2月期の業績予想では、営業収益9兆円(イオンは23年2月期より新収益基準を適用するため前期との比較はなし、旧認識基準では対前期比5.6%増の9兆2000億円を予想)、営業利益は同20.5 ~26.2%増の2100~2200億円、経常利益は同19.7~25.7%増の2000~2100億円、当期純利益は同184.3 ~261.2%増の250~300億円を見込む。
先行き不透明な状況が続く中、イオンは大幅増益を果たすことができるか。任期3年目となる吉田社長の経営手腕が注目される。