第42回 ネットとリアルの消費者行動を分けて考えてはいけない理由と商業施設の新たな意義とは
ECが日常になった今、出かけることが非日常になった。自らの大切な時間を使ってショッピングセンター(SC)に出かけても目当ての商品が無いこともある。店舗の接客で不愉快になったり途中事故もあったりトラブルに巻き込まれたり。ECがあるにも関わらず出かけていく価値。その価値がなければSCには行かない。前回、リアルとバーチャル、クリック&モルタル、オンラインとオフラインなどと分けて考える限り、この変化に対応できないと指摘した。今回はこの考え方を更に深掘りしていこう。
![peterhowell/istock](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2022/03/iStock-928414120.jpg)
小学校でタブレットが配布される意味
本格的なタブレット配布が始まった。これをkindleのように教科書を読むため、と思っていると未来を見誤る。確かに最初は既存の教科書がテキスト化されてタブレットで見ることになるだろう。しかし、次第に分からない単語には下線が引かれクリックすればその説明に飛ぶようになる。次に関連資料に飛ぶ。その次はそれぞれの児童に合わせたカスタマイズが始まる。
学校の勉強は誰でもつまずくことがある。しかし、つまずく場所は人それぞれ。数学も方程式でつまずく人、三角関数でつまずく人、微分積分でつまずく人、とにかくあらゆる科目でつまずく場所は散りばめられている。
しかし、これからはつまずくとそれをAIが察知し、理解を促す資料や映像や音声が登場する。それも児童によってテキストで理解しやすいタイプ、映像で理解しやすいタイプ、音声で理解しやすいタイプ、それぞれのタイプに応じて理解を促す。
AIが児童の進行速度を学習し、その児童に合わせたテキストができあがる。35人の児童がいれば35通りの教科書となる。これにより、どんなことが期待できるか。それは「落ちこぼれ」が無くなる、ということだ。
誰もが国語算数理科社会、体育に音楽、すべてに秀でた子など稀な存在、誰にでも得手不得手がある。それを無理やり大人が作った教科書に当てはめ、偏差値とか平均とか言うこれまた勝手な物差しで子供を測る。だから落ちこぼれが出る。
一方この「タブレット配布」には、それぞれに合わせた教育の可能性が秘められている。「明日までの宿題」も出来た子から送信すれば済む。これからは先生の「リピートアフターミー」という日本語英語を聞かなくて済む。タブレットをクリックすればネイティブの声が流れる。
これまでの知識詰め込み型の日本の教育は大きく変わる。ランドセルは無くなり、教師という職業の存在意義と機能も見直され、学校の存在もより人と人のコミュニケーションや他者とのつながりなど社会性を高める場所に変わっていくだろう。
ネットとリアルの活動を
分けて考えてはいけない理由
少し前置きが長くなったのは、この教育を受けた子供たちが消費市場に現れることを説明したかったからだ。
しかし、いまだ、SNSやECをバーチャルと表現する人もいる。
2009年、iphone(アイフォーン)が登場した時から人間もIoT(モノのインターネット化)の1つになったと筆者は認識している。スマホを持つことで人間もネットにつながり、位置が特定され、買い物履歴も蓄積され、住所氏名性別クレジットカード番号に至るまでの個人情報がネット上に置かれるようになったからだ。コミュニケーションも買い物も支払いも振込も、生活すべてが完結する。
近い将来、銀行を介さず給料がスマホに振り込まれる。その振り込まれる通貨もブロックチェーンで維持されたデジタル通貨となり、リアル通貨(現金)はいずれ無くなるかもしれない。
コロナ禍の今、実際に人と会って話す時間とZOOMやLINEやmailで会話する時間とどちらが多いだろうか。交換するデータ量で考えれば圧倒的にネットを介したものだろう。
ここで勘違いして欲しくないのは、「ネットがすごくてリアルはだめだ」と言っているのではなく、もはやネットでの活動がリアルな活動になっているのだから分けて考えずに考えなければならないことを主張したいのだ。
ネットで得た情報をもとに店舗で買う場合も、店舗で得た情報を下にECで買う場合も消費者には差別が無い。テレビで見た商品をECで買う日常は単に便利な方を選択しているに過ぎない。逆に事業者側もネットを使って情報を発信し、ネット上でコミュニケーションを取り、ネット上のECへ誘導する。世の中ではこれが、一般的になってきている。ネット技術を使ったサービスの一つがECであり、ECは購買チャネルの一つに過ぎないのだ。
こうした時代、商業施設の意義はどのように変わるのだろうか
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