第29回 安さ実現の原則
エンゲル係数が米国の2倍になる理由
2021年3月から輸入物価の急上昇のみならず、エネルギー価格の高騰、それに伴う輸送コストの上昇などで、国内企業物価も上昇した。メーカーは続々と、最大10%近い値上げを実施中である。それに連動して消費者物価も2021年9月から上昇に転じている。
とくに食品の価格高騰は深刻で、2021年5月に国連が発表した世界食料価格指数は対前年比で4割も上昇し、10年ぶりの高水準となっている。
一方で給与は減少傾向にある。新型コロナウイルス感染拡大で残業が減ったのはよいがこれまで当てにしていた超過勤務手当が支給されず、家計は苦しい。
それ以前に、最近発表されたOECD(経済協力開発機構)の国際比較統計において日本は、過去30年間の所得の伸び率が先進国の中でも最下位で、わずか4%しか増えていないことが露見した。そのわずかな上昇ぶんも、公共料金の値上げなどによって相殺され、実質の可処分所得は減少している。
これに対してアメリカでは30年間の所得の伸び率は約1.5倍になっている。結果、アメリカのエンゲル係数は13.9%まで下がっている一方、日本はその倍以上の28.5%と上昇している。さらに最近の食品の価格高騰が直撃し、日本人は貧しい暮らしを余儀なくされている。
こうしたなかわれわれは、食品の値段を下げる努力をしなければならない。危機的事態で生活者の暮らしを守るのは流通業者の義務なのだ。しかし、仕入れ価格が高騰しているのに粗利益高を削って販売すれば、会社の経営が成り立たない。従業者とその家族の暮らしさえ守れなくなるのでは意味がないのだ。