「富澤商店」が食品スーパーに 製菓・製パン材料の供給を広げる理由
EC売上高の約8割!
リピート率が裏付ける質の高さ
富澤商店の製菓・製パン材料の特徴は、創業以来、信頼関係を構築してきた全国各地の生産者から仕入れる農産物を、自社工場または指定工場で従業員の手によって選別・袋詰めをすることで実現する、確かな品質だ。
その品質の高さを裏付けるのが、同社ECのリピート率の高さだ。EC売上高の約8割が既存会員によるもので、購入者が「また購入したい」と思える信頼、満足を得られていることが窺える。
リアル店舗を
全国約20店に統合へ
富澤商店が食品小売店チェーンへ商品の供給を進める背景には、同社がリアル店舗の改革を進めていることがある。富澤淳社長は「EC化が進むなか、店舗はこれまで以上に、リアルならではの付加価値を提供できる存在にならなければいけない」と述べ、売場面積を現在の平均約25坪から2倍ほどに拡大した新型店舗を主要都市に出店する方針を明らかにしている。まず21年度に3店を、7年後をめどに約20店体制をめざし、現在の既存店については新型店舗に統合していく考えだ。
新型店舗では、「体験」の提供に重きをおく。売場面積の広さを生かして品揃えの幅を広げるとともに、商品を実際に見て、触って、試食できるようにしたり、店内で教室を開催したりして、製菓・製パンの楽しさや富澤商店の魅力を伝えられるようにするという。
さらに新型店舗では独自のスマホアプリも導入予定だ。「アプリの導入によってお客さまの行動データを“見える化”して、個々のニーズに沿った提案・コミュニケーションを可能にし、ネットと店舗双方で体験価値を高めるOMO(Online Merges with Offline)戦略をとっていきたい」と富澤社長は語っている。
食品小売店と手を組み
顧客接点を広げる
こうした戦略のもと富澤商店は今後、リアル店舗を約20店体制に集約させていくわけだが、それでは店舗で商品を購入したい顧客の中には、店が遠くなり、不便になる人もいるだろう。
そこで同社はとくに新型店舗が近くにないようなエリアで、食品小売チェーンへの商品共有を進めていきたい考えだ。
「富澤商店の商品の付加価値を理解していただけるような企業さまと手を組んで供給先を増やし、お客さまとの接点を隈なく広げていきたい」(富澤社長)。
店舗間競争が激化するなか今後、食品小売チェーン各社は価値ある商品を提供し差別化を図っていくことがますます重要になる。富澤商店の製菓・製パン材料はそんなに食品小売側のニーズにも合致しており、今後、導入するチェーンが着実に広がっていきそうだ。