第8回 ショッパー、小売業、メーカー企業の「三方よし」を実現する売場づくり提案とは

2022/02/22 07:00
    倉林 武也
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    小売業とメーカー企業、立場の異なるインサイトから接点をつくる

     小売業の担当者もメーカー企業の担当者も、それぞれの立場が異なれば求めるものも違う。

     この異なるベクトルを一致させて双方の効果を高めるためには3つの方法が有効だ。

    1. 併売値やリフト値の活用。
    2. ショッパーのインサイトによるテーマづくり。
    3. 生活歳時に目を向ける。

     対象となる商品や売場の状況に合わせて、小売業とメーカー企業それぞれの目標にこれらが合致するように進めることがポイントになる。

     例えば①併売値やリフト値の活用については、バイヤーの売りたい商品の販売をメーカー企業が自社のブランドや販促の施策によって押し上げる方法がある。具体的にはプライベートブランド(PB)商品をはじめ小売業がもっとも利益を得られる商品を、メーカー企業のブランド商品と一緒に訴求できるメニュー提案を行ったり、相互の需要を高めるテーマを提案するといったものだ。この場合、小売業の商品はPB商品に限らず、「その時期に最も売りたい商品」となる。写真1のPOPはメーカー企業の負担で用意したものと思われるが、小売業がこの季節に売りたい商品(おでん種)と一緒に訴求することで、お酒の売場でのPOPの設置を可能にしている。メーカー企業によっては商品が買い物客の目に留まりやすい場所に陳列される条件であれば、POPに自社の製品写真を掲載せずに商品を紹介するコピーだけを表記するケースも見られる。

    男梅サワーのポップ

     ②のショッパーのインサイトによる販促テーマづくりは、この連載でも何度か事例を取り上げて来た。小売業とメーカー企業の担当者のインサイトがお互いの目標だけを追いかけることになってしまう場合、その間に買い物客であるショッパーのインサイトを置くことで、販促の取り組む方向を一致させることができる。

     母の日の事例として本連載第6回に紹介した「ブーケサラダ」はその好例だ。今までと違うメニューを切り口に客単価を上げたいという小売業の要望と、母の日のような生活歳時で商品の売上を高めたいドレッシングを取り扱うメーカー企業の要望を結びつけるものとして、ショッパーである母親層に「火を使わず子どもと一緒に作れて、美容にも良いブーケサラダ」を提案した。このようにショッパーのインサイトで、小売業とメーカー企業のインサイトをつなぐ展開は、ショッパーと小売業とメーカー企業の「三方よし」の結果を生むことになる。

     最後に③生活歳時に目を向ける方法についてだが、生活歳時をテーマにした売場づくりは小売業にとって「ハレ」の企画になる。しかし、小売業のバイヤーや販売促進担当者のインサイトは常に新しい切り口や展開を求めており、毎年同じように行われる企画では新鮮味に欠ける。また、生活歳時向けの企画は、販促費などの費用効果を考えると「〇〇の日」当日や直前の短い展開期間では割に合わない現実がある。そこで写真2のような「展開期間」を長くとれるような企画を考えてみることも必要だ。

    「もうすぐ父の日 今月は家飲み満喫月間」のポップ

     6月の第三日曜日の「父の日」に向けて、「もうすぐ父の日今月は家飲み満喫月間」と打ち出すことで、関連商品を訴求する期間を拡げることができた。また、現在のようなコロナ禍であれば、買い物の集中を避ける意味からも6月の1ヶ月間を「父の月」として売場展開する考え方もできる。

     近年ではメーカー企業の小売業への提案も、自社のブランドや製品の紹介だけでは店頭化に結びつきにくく、商談のアポイントを取ることさえ容易ではなくなって来た。そうした時代の中で、メーカー企業が確実に実績を作っていくためには、小売業やショッパーのインサイトを理解した上で、それぞれが同じベクトルをもてるようにすることがこれからのポイントになるだろう。

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