ローソン アマゾン ジャパン 提携型オムニチャネル戦略
現在、オムニチャネルを1グループのみで構築できるのは、おそらくセブン&アイ・ホールディングス(東京都/村田紀敏社長:以下、セブン&アイ)だけだろう、となんとなく考えていた。
もちろん理由はある。
全国に1万6000店舗超のセブン‐イレブンを展開し、リアル店舗のインフラネットワーク(=ピックアップポイント)を築き上げていることが何よりも大きい。また、傘下に百貨店、専門店、GMS、SM、金融、サービスなど幅広い業態を持ち、オリジナルのプライベートブランドを展開するなど品揃えの豊富さも抜群だ。
残りは、リアルタイムインベントリー(在庫瞬時把握)に向けての情報投資やセイムデイデリバリー(受注即日配送)などの物流体制を固めれば、実現可能であり、相当な相乗効果も期待できる。
では、他のグループはどうかと言えば、セブン&アイには、何かの機能で届かない。
日本最大の流通グループであるイオン(千葉県/岡田元也社長)の場合は、セブン&アイと同様に業態や品揃えは豊富だが、総店舗数では及ばない。ここにきてM&A(合併・買収)をさらに加速させているので、セブン&アイを凌駕するような規模の店舗網が急に現れる可能性はあるけれども、いまのところセブン‐イレブンのようなきめ細かな店舗ネットワークは持っていない。
日本第2位のコンビニエンスストアのローソン(東京都/玉塚元一社長)や第3位のファミリーマート(東京都/中山勇社長)は、その逆で、全国にセブン‐イレブン規模の店舗網を確立しているが、品揃えの部分では、セブン&アイやイオンに及ばない。
さらには、米アマゾン・ドットコムもしかりである。
同社の日本法人であるアマゾン ジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長)は、ECリテーラーとしては盤石の首位。なおも日本市場で急成長を遂げているものの、オムニチャネルの定義である「いつでも、どこでも」を具現する実店舗を保有していない。
ピックアップポイントとして「アマゾンロッカー」などを独自に設置したり、ローソンとファミリーマートとはコンビニ受取りサービスを実施しているが、2万店規模の店舗を独自に展開するには、時間も投資もかかり現実的とは言えないだろう。
そんなことを見ていくと、「オムニチャネルはセブン&アイのみが1グループで実現できる概念」という思いをより強くする。
では、その他の企業やグループは実現不可能かと言えば、決してそうではない。
お互いに不足する機能を業務または資本提携のかたちで相互に補えば、セブン&アイよりも、完成度の高いオムニチャネル化を図ることができる可能性があるからだ。
アマゾンとローソン、アマゾンとファミリーマート、イオンとローソン、イオンとファミリーマート、イオンとアマゾン…。
それは荒唐無稽な絵空事かもしれない。
しかし、セブン&アイがオムニチャネル化を進めれば進めるほど、危機意識を抱く他グループ間に連帯感が芽生え、提携に向けた作用が働くのでは――。
と考えていたところ、本日(=11月4日)10時からローソンとアマゾン ジャパンが協業に関する記者会見を開くと発表した。
詳細については、記者会見後に報告したいが、「やはり」というのが正直な感想だ。
なお、会見では、玉塚ローソン社長が同社の新しいオムニチャネル形である「オープンプラットフォーム戦略」についても話すという。
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