「沖縄のサンエー」 躍進する
沖縄県を本拠に79店舗(単体)を展開するサンエー(上地哲誠社長)が絶好調だ。
2014年2月期(連結)の営業収益は、1575億6500万円(対前期比5.8%増)。営業利益は109億7400万円(同11.0%増)、経常利益112億4500万円(同10.7%増)、当期純利益は63億6100万円(同13.7%増)と過去最高益を記録した。既存店舗も同3.3%増だった。
「台風直撃もほぼなく、商環境に恵まれたことが大きな要因だ。本土の好況を受け、観光客は651万人(内国内客591万人)と過去最高を記録。人口は増加し、失業率は4%台とこれまでにないような数字を見せている」(上地社長)。
サンエーの2015年2月期の方針は「実行力」だ。
2012年2月期の「気づく力」、2013年同の「キャッチボール」、2014年同の「あるべき姿」に続くもの。「気づいたこと、学んだこと、考えたことは実行してこそ目的を達する」という上地哲誠社長の思いを言葉にした。
では、具体的に何を実行するのか?
これは5本柱から構成される。
1つには、既存店舗の積極的リニューアルによる活性化だ。2014年2月期は大型出店がない分、既存店舗のリニューアルに力を入れる。
豊見城ウイングシティ(GMS〈総合スーパー〉)、具志川メインシティ(GMS)、為又シティ(GMS)、しおざきシティ(NSC)、V21食品館きょうはら店(4月、2階にマツモトキヨシを導入)など続々だ。
2つめは、新店舗、リニューアル店舗、フライチャイジー店舗に磨きをかけることだ。
今期の新規出店は、食品スーパー(SM)のV21食品館佐真下店(売場面積1100㎡、年商目標10億円)のみ。前期の新店八重瀬シティを育成し、前期にリニューアルしたマチナトシティを軌道に乗せる。また、前期にFC契約を締結し、1号店を開業したフランチャイジーである無印良品は好調。早期に2号店を出店する。タリーズコーヒーも多店舗展開に乗り出す。
3つめは、PB(プライベートブランド)「ローソンセレクト」の拡大だ。
サンエーはローソン(東京都/玉塚元一社長)のPB「ローソンセレクト」を日本一販売する企業。2012年4月にサンエー食品館全店で発売をスタート。2013年10月には、ローソンとサンエーの共同開発による沖縄県限定の「ローソンセレクト」を28アイテム発売したところ、「ローソンセレクト」の売上の約3割を占めるようになり、好調に推移。2015年2月期にはこれを50アイテムに拡大する。
「サンエーにはNB(ナショナルブランド)があり、ニチリウ(大阪府/夏原平和社長)のPB『くらしモア』がある。その間を埋めるような位置づけで『ローソンセレクト』を強化すると、より利便性を高めることができる」(上地社長)。
4つめは、ネットスーパーだ。5月中旬から、経塚シティの半径1.5km内に居住する2万3000世帯のエリアで800人の会員を集めて、サービスを開始する。月額400円で何度でも利用できる仕組み。店舗から3~5kmの小商圏内のサービスで、ターゲットは共働き子育て世代と60歳以上。ネットの他、電話、FAXでの注文が可能だ。
「できるだけ早く軌道に乗せて、多店舗展開を図っていきたい」(上地社長)。
5つめは、6人で構成される「人財育成室」を新設したことだ。採用しづらいまたは熟練を要する職務である「食品」、「外食」、「食品加工センター」の正社員比率を向上させ、勤続年数を伸ばすことを狙う。
「向こう3年間で正社員比率を15%には上げたい。たくさん採用するだけではなく、長く勤められる企業として評価してもらいたい」(上地社長)。
同社の正社員の平均勤続年数は12年、パートナー社員は同7年と業界平均。産休や育休を充実させることで安心して職場復帰できる環境を整え、女性社員の活躍を一層推進する。
「現在、〈フランチャイジーである〉マツモトキヨシ(千葉県/成田一夫社長)既存全5店舗の店長は女性。だが、GMSの女性店長は少ない。理想としては、全GMS店舗に女性の副店長を1人ずつ据えたいところだ」(上地社長)。
このように絶好調のサンエーではあるが、伸びているマーケットには、また参入者も多い。2015年春には、中頭郡に沖縄県最大規模の商業施設「イオンモール沖縄ライカム」が開業する。
「油断はしない」と上地社長は、引き締まった表情で語った。
なお、2015年2月期の業績予想は、営業収益1594億2500万円(対前期比1.2%増)。営業利益は111億8100万円(同1.9%増)、経常利益114億1000万円(同1.5%増)、当期純利益は66億2100万円(同4.1%増)となっている。
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