『広辞苑』の出動回数が減っている
私の机の上には、『広辞苑』第四版(新村出編)が置かれている。
ダイヤモンド・フリードマン社への入社時に購入したもので、20年以上の長きにわたって机上に鎮座してくれている。見た目は綺麗なものの、持ち上げればボロボロである。
ただ、彼の出動回数は、2000年を過ぎた頃から圧倒的に減っている。
電子辞書が普及し始め、分からない言葉や読めない漢字は、大抵の場合は、ネット上で調べてしまうためである。
今年に入ってからの出動は、わずか1回。いま、このBLOGを書くために第何版なのかを調べたためである。
私自身、そのくらい、紙の辞書を引くという行為がなくなってしまった。
しかし、紙の辞書の良さというものは厳然として存在する。
何よりも言葉にたどり着くまでがひと仕事なので、引いた単語や意味を忘れないように心がけるという効果がある。
また、辞書を引きながら、寄り道をすることも多く、語彙を増やすには、もってこいとも言える。求める言葉の前後を覚えれば、効率は実に3倍になるわけだ。
だから、とくに学生などの若いうちは、あえて非効率な紙の辞書の活用を推奨したい。
などと考えていたら、学生への電子辞書の普及、浸透ぶりは、大変なことになっているらしい。若者の中には、すでに「あ・か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ」の順番を知らない者もできているそうだ。
「いろは四十七文字」もおぼつかない人たちが増えていることを考えれば、これも御時勢と受け入れてしまうことは簡単だ。
けれども、日本人の「アイデンティティ」である言葉が目の前でどんどん失われていく様子は見るに耐えない。
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