日本マクドナルドHD 決算発表実況中継(1)
日本マクドナルドホールディングス(東京都/原田泳幸社長)は、2012年12月期決算を発表。2月7日に説明会を開催した(@ロイヤルパークホテル)。社長就任以来、初の減収減益決算となった原田社長は何を語ったのだろうか? 本日から3日間にわたってその模様を再録する(談:文責・千田直哉)
私が日本マクドナルドホールディングス(東京都)の社長に就任した2004年度から2011年度まで8期連続で増収を重ねてきた。
2012年度は9期ぶりに減収減益決算となった。非常に残念なことであるが、こんなところで落ち込んではいられない。2013年度は増収増益を目指したい。
まず、2012年度の通期決算について振り返りたい。
全店売上高は5298億円(対前年度比1%減)。売上高(直営店売上高+フランチャイズ〈FC〉店のロイヤルティ収入)は2947億円(同2.5%減)。直営店からFC店へのシフトを毎年進めているので、売上高は漸減傾向にある。既存店舗は同3.3%減だった。
ここで注目しておきたいのは、全店売上高が同1%減、既存店舗売上高が同3.3%減という点であり、この乖離は2.3ポイントある。すなわち、数年来、店舗を入れ替え、特に「ゴールドスタンダード ドライブスルー」というドライブスルー付き大型店舗を継続出店してきたことが奏功しているということだ。
今後も「ゴールドスタンダード ドライブスルー」を出店することによって、まだまだ成長機会があると見ている。
利益面については、営業利益は247億円(同12%減)、経常利益は237億円(同14%減)、当期純利益は128億円(同3%減)だった。
営業利益と経常利益が2桁のマイナスになっているが、その一番大きなインパクトは、既存店舗がマイナス3.3%だったことだ。次には原材料費の高騰、そして閉店コストの順番にインパクトがあった。
また、2011年度の東日本大震災の直後は、マーケティング費用をほとんど使わなかったが、2012年度は対前年度比でプラスになったことも2桁マイナスにつながっている。
次に2012年度の客数は、全店客数が同4.3%増、既存店客数が同2.2%増。大型店舗化を推進する中で、全店客数が伸びている。
冒頭で話したように、社長就任9年目にして、減収減益決算となってしまった。
2012年度のマーケットはどんなであったかと言えば、特徴は3つある。
1つは、長引く不況とデフレによる日本経済の低迷。2つ目は、限定的な震災と節電のリバウンドがあったということだ。
3つ目はIEO(Informal Eating Out)市場が縮小し、HMR(Home Meal Replacement)へのシフトが進んできたということ。HMR(=デリバリー、宅配、テイクアウト、中食)の市場は、外食産業全体が落ちている中でも伸びている。
2011年7月~9月は節電の影響で市場が落ち込んだ。2012年は、そのリバウンドが当然来るもの予想し、「世界の★★★マック」(「ル・グラン」〈フランス〉、「ゴールドマサラ」〈インド〉、オージーデリ〈オーストラリア〉)という新商品3種類を投入したが、まったくと言っていいほど来なかった。震災のリバウンド以上に景気の落ち込みや市場の落ち込みが厳しかったと分析している。
IEO市場は年間では、対前年度比6.8%減と大きく落ち込んだ、と当社は試算している。この数字は、消費者の購買頻度と一致する。加えて外食産業の客単価は確実に下がっている。当社は緻密なリサーチを常に継続して実施しており、顧客満足度やブランド認知度は確実に伸び、マーケットシェアもプラス0.2ポイント(pt)になった。ただ、こうした環境に抗えず、既存店舗は3.3%減となった。
IEO市場は、ダウントレンドにあると言っていいが、私は、これを悲観的には考えていない。
家庭内の食の消費量を外食産業のビジネスのサイズにコンバートして計算すると、いまの外食産業7.7兆円市場の約9倍になるからだ。このマーケットを掘り起こすことは、外食産業経営の当然の命題である。
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