知る人ぞ知るスーパーマーケットの聖地、 福岡・小倉の旦過市場を歩く

2024/07/05 05:55
森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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「特上にぎり」をいただく

 市場を南の方向に進むと、火災の被害を受けたのは左手、つまり通りの東側だったことがわかる。かつては古びた商店が所狭しと並んでいたが、今は更地になっているのか簡易の塀で覆われていた。ただ、中には焼け残った看板を掲げ、以前と同じ場所で再スタートを切っている店も見られた。

火災の被害に遭ったのは市場の東側(左手)だったことがわかる
焼け残った看板を掲げ、同じ場所で再スタートを切っている店もあった

 さらに歩き、発見したのは被災した店舗が仮設の建物で営業する「旦過青空市場」という区画。環境は大きく変わってしまっても、旦過市場にこだわり、商いを続ける様子からは、人間のたくましさが伝わってくる。

 よく見ると、その一角の通路には飲食スペースが設けられている。テーブルが並べられ、市場で購入した商品を持ち込めるようになっている。当初、その予定はなかったのだが、応援の意味を込め、私もここで食事してみることにした。

 市場を何度も往復し、まず買ったのは寿司。鮮魚店直営の店とのことで見た目にも大いに食欲をそそられた。数ある商品のうち大トロやあわびなど8貫入りの「特上にぎり」を選んだ。さらに人が群がっていた揚げ物の店では「アジフライ」、「鹿児島県産豚肉メンチカツ」なども購入した。

焼け残った看板を掲げ、同じ場所で再スタートを切っている店もあった

 飲食スペースへ戻っていただく。最初は寿司からである。容器のフタを皿代わりにして入れたしょうゆにつけ頬張った。ネタが新鮮なのだろう、歯応えもこりこりした食感、パック入りの寿司とは思えないおいしさに感動した。フライも美味で、箸が止まらなかった。あれよあれよという間に完食した次第である。

容器のフタに入れたしょうゆを少しつけ、寿司を頬張る
フライもかなり美味だった

 満足して再び市場を歩いた。するとさっきよりも人出が増えており、皆、笑顔で各店をのぞき込んでいる様子が印象的だった。大きな被害を受けたものの、北九州市を代表する市場は再起に向け、確実に動き出していると感じた。

再び市場を歩くと、さっきより人出が増えていた

 もし小倉を訪れる機会があれば、ぜひ足を運んでほしいと思う。

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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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