ある経営者の消費税増税についての所感
先日取材した経営者の消費税に関する所感に興味深いものがあったので、以下に記しておきたい(談・文責:千田直哉)。なお、この経営者は2日前(1月29日)のBLOGで書いた柳井正さんではないことを断っておく。
このところ世間には、消費税率アップの機運が充満している。
安住淳財務大臣は、「税と社会保障の一体改革」案を唱え全国行脚。現在5%の税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げると言う。
財政立て直しのために、消費税アップするという考え方は最終的にはいたしかたないのだろう。しかし、その前に行政改革などに取り組み、公務員や国会議員への歳費や政党交付金などを減額して、痛みを共有してもらわないと国民としては納得できない。また、増税する一方では、所得税などの減税を抱き合わせで提示する必要もあるだろう。
それを抜きにしての消費税率アップは絶対反対である。
もうひとつ反対なのは、2004年4月に義務化された消費税総額表示(内税)方式である。
5%→8%→10%というソフトランディングには、賛成する。だが、内税で3%、2%と少しずつアップした場合、増率分を負担するのは消費者ではなく、製造業か小売業になる可能性が高いからだ。
その理由を以下に述べたい。
現状の売価は「98円」や「980円」というように、消費者にとって値ごろ感のある金額につけているのが一般的だ。
その際、たとえば、一挙に10%アップであれば、商品売価をいままでの価格から大きく変えることができる。
しかし、売価「98円」(内税)の商品を消費税率がアップされたからといって「101円」「102円」に引き上げることはなかなかできないものだ。あまりにも中途半端で割安感などまったく感じられない数字だからだ。ということは、消費税率増加分を売価に上乗せすることは難しいと結論していいわけだ。
小売業は、店頭で売価を上げられない商品について、まず、製造業や卸売業に「負担して欲しい」と要請を出すだろう。ところが、卸売業は薄利で儲かっていないので負担できない。だから、製造業が負担するか、断られた場合は小売業が自ら負担を強いられることになってしまう。
しかも消費税率アップは、これで終わりではないだろう。
将来的には15%や18%という噂の声も挙がっている。ならば、総額表示をやめ、再度、外税方式に変えるべきだ。
本体価格がいくらなのか分かりやすいことはもちろん。被災地限定で税率を据え置きしたり、食品や生活必需品については税率を変更したりすることができるからだ。
官僚は、自分でモノを購入しないから分からないだろうが、消費税率をアップする前に、もう少ししっかりと製造業、卸売業、小売業、消費者などから意見を集め、さまざまな角度から論議を重ねて欲しいものである。
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