「分かりません」は打ち切りのサイン
もう15年くらい前の話になる。
倒産の危機に瀕したある小売企業のメーンバンクが融資を打ち切るという噂を耳にして、その真偽について、都市銀行の広報室に取材に出かけた。
「分かりません」。
そっけない答えが返ってきただけだったが、「打ち切る」ものだと私は理解した。
理由は簡単だ。
銀行広報室の私の問いに対する回答は、「打ち切る」「打ち切らない」「分からない」の3つしかない。
もし、「打ち切らない」のであれば、「打ち切らない」と否定しこれまでの体制を継続することを明言すればいい。旧体制維持で迷惑がかかる企業や人間は、その時点ではほぼいなかった。
一方、「分からない」という答えは、隠された何かがあるということを表している。「打ち切らない」と言い切れない何かがあるのだと考えるのは普通だ。
だから噂は本当であり、「打ち切る」に違いないと確信した。
実際、その数カ月後には、打ち切りの事実が明らかになった。
私が取材した広報担当者は、その銀行に勤める私の友人と同期入社があることが分かったので、後日、当時の対応の舞台裏について聞いてもらった。
結果は、私の読み通りで、その時点で「打ち切る」ことは決まっていたが、まだ出したくないので「分からない」と答えていたのだという。
千田直哉の続・気づきのヒント の新着記事
-
2024/09/02
魅力的な売場…抽象的な誉め言葉の意味を明確化するために必要なこととは -
2024/08/02
日本酒類販売社長が語る、2023年の酒類食品流通業界振り返り -
2024/07/03
「何にでも感激する経営者」の会社が業績が良い“意外な”理由 -
2024/06/07
経費率16%なのに?ローコスト経営企業が敗れ去るカラクリとは -
2024/05/23
キットカットをナンバーワンにしたマーケター「アイデアより大事なこと」とは -
2024/04/15
スーパーマーケット業界のゲームチェンジャー、オーケー創業者・飯田勧氏の経営哲学とは