商品開発担当に向いていない人たち
「小売業は、川上に進出して、SPA(製造小売業)化しないと、生き残れない」という説が支配的になってきている。
確かに多くの企業は、自社開発商品やPB(プライベート・ブランド)づくりに努め、年々、その売上構成比率を上げている。
実際、ユニクロ(山口県/柳井正社長)、ニトリ(北海道/似鳥昭雄社長)、カインズ(群馬県/土屋裕雅社長)、大黒天物産(岡山県/大賀昭二社長)、西松屋チェーン(兵庫県/大村禎史社長)など、消費不況をものともせずに躍進する企業の多くは、SPA化を手掛けている。
そうした風潮が定着するなかで、SPAの要諦ともいうべき商品開発担当者を誰にするは、多くの企業にとって頭の痛い問題だ。
そんななかで、ある大手GMS(総合スーパー)企業OBから、商品開発担当者に向いていない人たちの傾向を聞いたので、紹介したい。
まず、真っ先に、向いていないのは、創業2代目、3代目、4代目の経営者だという。
銀の匙を咥えてこの世に生を受けて以来、“庶民”とはかけ離れた生活を送ってきたからであり、庶民感覚を持ちえないからだそうだ。
作家(ペンネーム:茶屋二郎)で日本BS放送の社長でもある山科誠さんは、バンダイ(東京都/上野和典社長)の創業2代目社長。社長には1980年に35歳の若さで就任した。
そんな凄腕経営者の山科さんではあるが、ある時を境に商品開発に口を出すのは、やめた。
山科さんの旧友の証言によると、あのピンク・レディのキャラクター商品の可否をジャッジしなければならなかった折に、「これ、なんだよ? 売れるわけないじゃない」とやってしまったのだという。
ところがその判断に反して、ピンク・レディの商品は大当たり。それ以来、商品開発には一切意見をしなくなったのだそうだ。
しかも、口を出すのをやめた途端に、機動戦士ガンダムのプラモデル(=ガンプラ)やたまごっちなどのヒット商品が続々誕生した。
仲間内では“山科伝説”として語られているエピソードだ。
もうひとつ。商品開発に向いていない人種がいる。
それは、商品開発が三度の飯よりも好きな人たちである。
前出のOBは、商品開発が好きな人間に任せてしまうと、商品開発のための開発のような商品になってしまい売れたためしがないのだという。
「お酒の好きなホステスさんが水商売では成功しない、というようなものです」とOBは笑いながら話してくれた。
逆に、「嫌々商品開発をしているくらいの人の方がヒット商品を連発する」というのだから世の中は分からない。
まあ、そのOBの偏執的な意見と流してほしいところではあるが、わが社の担当者はどうなのかを、実際に確認してみる価値はあるかもしれない。
※これから合宿に参加するため、明日のBLOGの更新時間は19時過ぎになる予定です。よろしくお願いします。
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