消費者の意見を聞くからいい
メトロ キャッシュ&キャリー ジャパン(東京都/石田隆嗣社長)は、ドイツのメトロ社と丸紅との合弁で2002年に設立された会員制ホールセールクラブ(MWC)である(現在は外資100%)。創業7年で6店舗というスローな出店ペースながらも確実に日本市場に浸透してきた。
完全なBtoB(企業間取引)の商売であり、会員は飲食店や居酒屋などの業者のみ。一般消費者は一切受け入れていないのが大きな特徴だ。同じMWCでも、日本市場ではBtoC(対消費者取引)商売が主体のコストコとは全く異なるところだ。売場面積は3000平米とコストコの3分の1程度。1店舗当たり約40億円の売上がある。
メトロ キャッシュ&キャリーは、世界29カ国に約650店舗を展開しているグローバル流通業であり外資成功組であるが、10月4日のブログで書いたコストコやイケアとは違う手法で日本市場を攻略して異彩を放っている。
先の2社は、お客の意見を聞かずに、お客の要望を先回りして自社のオペレーションを崩さない。
これとは対照的にメトロ キャッシュ&キャリーは、日本を「世界の中でも特異な市場である」ととらえ、お客から意見を聞きまくり、要望を把握し、市場に存在しない商品であれば自らがつくってしまう。
店舗には「カスタマーコンサルタント」を数人配置して、毎日お客のところに出向き、直接会話を交わす。また、お客を店舗に招き、「カスタマーパネル」と呼ばれる定期相談会を開いている。店舗スタッフは、お客の顔を覚え、来店すると個人名を呼びかけ、必要であれば要望を聞き、解決策を提案する。
いまや日本のパパママストアでさえも忘れてしまったような細かなマーケティング活動を日々積み重ねているのだ。
「国際企業の根幹にある戦略は進出国の要望に適応することである」とメトロ キャッシュ&キャリー インターナショナル フランス・ミューラーCEO(最高経営責任者)は力説し、日本市場に自社の成功モデルを押しつけては敗れた多くの流通外資とは一線を画すところを見せている。
よくドイツ人と日本人はウマが合うなどと言われる。
しかし、そんな言葉に甘んじることなく日本市場への順化に努めるメトログループに大きな成長性と驚異を感じる。
(詳しくは『チェーンストアエイジ』誌2009年11月15日号で)
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