企業規模を拡大しない、という生き方
企業は拡大し続けなければならない。
従業員には年齢に応じたライフスタイルがあり、結婚して、家族を持ち、両親の面倒を見て、自分の子供が独立する辺りまでは“入用の日々”が続く。そして企業はこの要求に応えなければいけない。
だから企業は対前期比主義で予算を組み、継続的出店やM&A(合併・買収)を繰り返すことで規模拡大に努める。
と2010年2月12日のBLOGに書いた。http://diamond-rm.net/articles/-/3614
ところが、「企業規模を拡大しない中で生き残りの道を探りたい」と言う企業が出てきた。
北海道苫小牧市に本部を構える豊月(豊岡憲治社長)である。2011年1月期の売上高は202億円(12店舗)。従業員数は983人(正社員129人、パート社員854人)という中堅規模の企業だ。
実は、同社は創業以来25年にわたってディスカウント販売を実践してきた。
しかしながら、ここ10年はアークス(北海道/横山清社長)、コープさっぽろ(北海道/大見英明理事長)、イオン(千葉県/岡田元也社長)グループの3社の低価格訴求に押されっぱなし。また、ハードディスカウンターであるトライアルカンパニー(福岡県/永田久男社長)の進出などで、道内に低価格が定着してしまい、「低価格=競争力」とはならなくなってきた。
そこで同社は、高質スーパーとディスカウント販売を融合させた「クオリティ&ディスカウント」というフォーマットを新たに開発。3店舗を展開するに至っている。
「クオリティ&ディスカウント」は、従来のディスカウント販売との比較では、売上高は落ちるが、付加価値の高い商品を売るので営業利益は増加するというフォーマット。
今後、同社は、企業規模が縮小する中でも何とか利益を捻出し、出店も積極的にはしない。
その姿は、家族経営で何とか糊口をしのぐパパママストアを彷彿させる。
そして、今後は豊月のような規模の“パパママ食品スーパー”のような企業がいたるところに出てくる可能性は大きい。
もし、そうなるとするならば、企業の淘汰数は減少し、業界は寡占化に向かわないかもしれない。
千田直哉の続・気づきのヒント の新着記事
-
2024/09/02
魅力的な売場…抽象的な誉め言葉の意味を明確化するために必要なこととは -
2024/08/02
日本酒類販売社長が語る、2023年の酒類食品流通業界振り返り -
2024/07/03
「何にでも感激する経営者」の会社が業績が良い“意外な”理由 -
2024/06/07
経費率16%なのに?ローコスト経営企業が敗れ去るカラクリとは -
2024/05/23
キットカットをナンバーワンにしたマーケター「アイデアより大事なこと」とは -
2024/04/15
スーパーマーケット業界のゲームチェンジャー、オーケー創業者・飯田勧氏の経営哲学とは