感動する!
1987年、飛行機に乗り、友人とリュックサックを担いで中国大陸を漂流した。
初めて踏んだ異国の地は、何もかもが新しい世界であり、無垢な五感のすべてが刺激され、感動しまくったことをいまでも鮮明に覚えている。
当時ベストセラーだった盛田昭夫さんの『MADE IN JAPAN―わが体験的国際戦略―』(朝日文庫)の中に、「本人が自ら進んで勉学に励まない限り、どんな大金を投じてもその人を教育することはできない。だが、お金によってできる教育がひとつだけある。それは旅行である」という一節を見つけ、「その通り!」と膝を叩いたものだ。
しかし、大人になって、国内・海外旅行の数が増え、経験を重ねるうちに、どこに行っても感激しなくなる。決して、斜に構えているわけではない。
遭遇した事象を冷静に見ることができるようになった、と言えば聞こえがいいが、どうもそうではなく、身体の中からふつふつ湧き上がる好奇のパワーが質的にも量的にも、どんどん落ちているような気がする。
ところが、先日の出張で一緒だったある企業の経営者は違った。
「お菓子の値段」「車の増え方」「生活者の服装」、何を見ても、必要以上に驚くのだ。その感激の大きさは、見ている私が恥ずかしくなるほどだ。
「この人、わざとオーバーリアクションをしているんだろうな」とはじめは、懐疑的に見ていたのだけれども、ツアーの最中、ずっと同じ姿勢を崩さなかった。
感受性が強いからと個人のパーソナリティのせいにしてしまえば、それまでだが、些細な変化を見逃さず、感激できるのは凄い能力だと、帰路の機上で思い直し、反省した。
もちろん、その企業は、消費不況を尻目に好調を堅持している。
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