浅田次郎さん講演録(@東京国際ブックフェア)
第17回東京国際ブックフェア(7月8日~11日@東京ビッグサイト)を覗いてきた。世界30カ国から過去最多の1000社が出展。来場者は4日間で約9万人に及び、本を愛する人たちの多さに少しほっとした気分になった。
会場内で開かれた作家浅田次郎さんの講演会には4200人も申し込みがあり、本会場とは別にPV(パブリックビューイング)による同時放映会も催された。以下では、浅田さんの講演録を記す。
読書人とは「読書を愛好する人」という意味のほかに「読み書きのできる人」、すなわち「尊敬の対象」という意味がある。
日本は、大半の人々が読み書きのできる大教養国家だった。江戸時代末期にはすでに90%以上が読み書きができた。
それは国土の形によるところが大きい。総面積の5分の4が人の住めない山地であり、人口が平野や盆地に集中していたため、集中教育がしやすかったからだ。
昨日までちょんまげを結っていた人々が、明治維新の波に乗ることができた裏側には、読書人が多くいたという事実がある。
いまは残念なことに、若者を中心に活字離れが進んでおり、読書の時間はどんどん減っていると言われる。
でも振り返ってみれば、それは当然のことで、我々の青年時代は何もなかった。下宿には裸電球があるだけ。冷蔵庫やテレビなどの家電製品もろくになかった。
その代わり、時間はたくさんあったから、夜間は読書でもするしかなかったのだ。ほかに時間をつぶす方法も知らなかった。
ところがいまの時代は何でもある。読書時間や読書量が減って行くのは当たり前の話だ。
しかし、読書ほど大切なものはないと私は考える。
貧相な情報源から情報収集していても人間は退化するのがおちである。
何をしでかすかわからないまで進化していく科学を制御できるのは、読書から得られる知恵しかないと思う。
だから、努めて読書をするようにして欲しい。意識的に読書をする時間をつくらなければだめだ。
その際に大切なことは、読書を勉強にしないことだ。読書は娯楽であり、道楽である。学問にしてしまうと、苦しくてやめたくなるものだ。
楽しんで読書をしてほしい。
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