存命のために王者ができること
かつて、ローマの将軍小スキピオは、第3次ポエニ戦争で強国カルタゴを打ち破った折に、はらはらと涙をこぼしながら叫んだ。
「あれほどの隆盛を極めたカルタゴも、いま炎の中にある。どうしてローマだけがこの宿命から逃れることができようか?」
この小スキピオの嘆きは、日本においては、「祇園精舎の鐘の音…」に始まる『平家物語』の盛者必衰感、あるいは「ゆく河の流れは絶えずして…」の鴨長明『方丈記』の万物流転の法則に見ることができる。
しかしながら、人間は、経験的に習得してきたこうした思想を忘れてしまいがちだ。
頂点を極めた後は必ず、落ちていかねばならない。
ノンフィクション作家の沢木耕太郎さんの著作『王の闇』(文春文庫)のテーマでもあった。
現在、全盛を極めているような企業も必ず勢いを失い陥落する。
王者ができることと言えば、節制して鍛錬を重ね、その時を先延ばしすることだけだ。
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