旧体制維持に奔走する音楽業界
音楽業界は寡占時代を迎えている。オリコンの年間シングルCD売上高ランキングを遡ってチェックしてみると恐ろしい事実が見えてきた。
トップ10入りした歌手・グループを記載していくと・・・
2017年(4組):AKB48 乃木坂46 欅坂46 嵐
2016年(3組):AKB48 乃木坂46 嵐
2015年(5組):AKB48 SKE48 乃木坂46 嵐 NMB48
2014年(4組):AKB48 嵐 乃木坂46 Exile tribe
2013年(4組):AKB48 EXILE 嵐 SKE48 NMB48
2012年(3組):AKB48 嵐 SKE48
2011年(5組):AKB48 嵐 薫と友樹、たまにムック。 SKE48 kis-my-ft2
2010年(2組):AKB48 嵐
2009年(8組):嵐、矢野健太 starring Satoshi Ohno 嵐 秋元順子 B’z KAT-TUN 遊助 関ジャニ∞
2008年(7組):嵐 サザンオールスターズ Greeeen 羞恥心 Mr.children 青山テルマ feat. Soulta KAT-TUN
2007年(9組):秋川雅史 宇多田ヒカル コブクロ 嵐 KAT-TUN 桑田圭祐 Mr.children 関ジャニ∞ News
2006年(9組):KAT-TUN レミオロメン 修二と彰 山下智久 EXILE Mr.children 湘南乃風 BUMP OF CHICKEN Kaoru Amane
実に2012年以降の6年間は、秋元康さんがプロデュースするユニットか嵐(ジャニーズ事務所)かEXILE(エイベックス)しか10位以内には入っていない。もっとも顕著なのは2010年で、AKB48と嵐の2組でシェア100%だった。
音楽ファンの楽しみのひとつはランキングの新陳代謝にある。5年単位くらいでトップ10入りのレギュラーメンバーは交代する。毎年毎年、誰それ? というような新人が出てきたりする。
古い話になってしまうが、私の印象にもっとも残っているのは1980年だった。
「もんた&ブラザーズ」「久保田早紀」「クリスタルキング」「シャネルズ」「ロスインディオス&シルヴィア」「田原俊彦」といった前年までは、ランキングとはまったく関係なかった場所にいたミュージシャンが続々とトップ10入りを果たした。
たぶん、いまも素晴らしい楽曲を携えたグループや個人はデビューしたり、下積みをしたりしているのだろう。けれども少なくとも直近の10年近くは、彼らがCD売上ランキングにおいて、陽の目を見ることはなかった。
この原因については、いろいろなことが考えられる。
世間的にもっとも支配的なものは、秋元康さんの商売のうまさだ。握手券や投票用紙を同梱したり、ジャケットの写真を変えたり、1人のファンにCDを何枚も買わせる既存顧客の深耕ぶりには、思わず、「うーん」とうならされてしまう。
でも、それはまったく違うような気がする。
音楽データが普通に売り買いされる現代において、CD販売のビジネス自体が前時代の遺物だと考えるからだ。
売上枚数ランキングは楽曲の人気度を測る尺度になっていないということだ。
それでも、CD販売で食べている人たちがいる限り、音楽業界は生き延びていかなければいけない。そのアンシャンレジーム(旧体制)を必死で崩壊させまいとしているのが、業界で牽引的な役割を果たしてきた秋元康さんやジャニーズ事務所、エイベックスのような企業、というのが私の見立てだ。
シュリンクする市場で需要を創造し、維持していくには、いたし方のないシステムなのだろう。
現代にマッチしていない古いビジネスモデルの中での最善の手法がいまのランキングに反映されているような気がする。
その中でいくらあがこうとも、本当に支持され、聞かれ、影響力のある楽曲はCD販売からは出てこない。
まして「You Tube」からヒット曲が続々と生まれる時代。儲けの仕組みはかつてとはずいぶん変わっている。
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