『「値づけ」の思考法』小川孔輔=著 日本実業出版社刊 1600円(本体価格)

2019/09/15 00:00
    ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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    「値づけ」の思考法

    「コインパーキングの儲けの発想はラブホテルと同じ?」「なぜ『スーパーホテル』は宿泊料金が安いのに顧客満足度が高いのか?」「牛丼屋が牛丼のサイズの種類を増やすと売上が伸びる?」本書の目次ページを開くと、思わず興味をそそられるキャッチーな見出しが並ぶ。本書では、マーケティング学界、とくにブランド戦略の分野では高い知名度を誇る著者が、有名企業のプライシングや価格戦略を事例とともに解説している。

    「利益の95%は価格戦略で決まる!」というオビの文言どおり、企業の儲けは価格設定によるところが大きい、と本書の中で著者は述べている。冒頭のコインパーキングの事例を見てみよう。

    同事例の中で筆者がまず掲げているのが「月極駐車場とコインパーキング、儲かるのはどっちか?」という命題だ。月極駐車場の料金が3万円、コインパーキングでは通常時間帯(8~24時)が1時間当たり400円、深夜・早朝(24~8時)は100円が相場の、実際に存在する東京都新宿区のあるエリアを例にとって考えると、コインパーキング1台ぶんのスペースがフル稼働した場合、1日の売上は7200円(400円×16時間+100円×8時間)になる。

    利益率を仮に7割としたとき、1日当たりの利益は5040円(7200円×0.7)で、1カ月(30日)の利益は15万1200円(=7200円×30日)となる。

    つまり、コインパーキングは月極駐車より最大で約5倍儲けることができるのである。

    本書が解説するところでは、これは本来であれば1つにまとまったサービスを細かく分割する「小口化」と呼ばれる販売手法であり、通常1泊のサービスを時間貸しにして回転率を上げることで1泊料金以上の利益を得る、ラブホテルの収益モデルと同じ発想であるというのだ。

    このように、本書では身近なサービスや商品がどのような考えで価格が決められているかをわかりやすく解説している。セブン-イレブン・ジャパンやユニクロといった有名小売業の事例も豊富であり、参考になる点は多いはずだ。

    (『ダイヤモンド・チェーンストア』2019年9月15日号掲載)

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