キッコーマン代表取締役社長CEO 堀切 功章
長年培ってきたノウハウを生かし新たな価値を提供する!
価値を訴求する提案に力を入れる
──消費者の低価格志向は依然、根強いものがあると思います。どのように考えていますか。
堀切 メーカーも小売業も同質競争のなかでは価格が最大の競争要因になってしまいます。価格はたしかに重要な要素ですが、お客さまに与える満足感は非常に限定的で、極論すれば1回限りのものだと考えています。
今まで100円で販売していたものが50円で購入できれば、一時は得した気持ちになり満足するかもしれません。しかし次に店に足を運んだときに売価が100円に戻っていたらがっかりする。それが90円だったとしても同じです。
継続的に満足を提供しようと思うのならば、価格とは違う切り口でお客さまに商品の価値を訴えていくことこそが大事ですし、そうしなければ勝ち残れないでしょう。
そのため当社では、小売業さんとの商談では価格一辺倒ではなく、商品価値を訴える提案も積極的に行っています。
醤油や簡便調味料など、当社の商品はほかの食材と組み合わせて使用するものが大半です。たとえば「うちのごはん」を生鮮食品の売場に置いたり、刺身醤油を鮮魚の売場に置いていただくような提案に力を入れています。最近では、加工食品だけでなく、生鮮部門のバイヤーさんと商談や合同会議をしていただけるようになってきました。
また商談では、お取引先さまが何を志向しているのかを踏まえたうえで、サプライヤーがチームを組んで提案することも増えています。小売業や卸売業、メーカーはお客さまによりよいサービスや商品を届けるパートナーです。
──チームを組むということでは、メーカー同士の協業も進んでいます。
堀切 9月に発売した亀田製菓(新潟県/田中通泰社長)さんとのコラボレート商品「調製豆乳おせんべい」のように、商品を共同で開発したり、つゆとそうめんの組み合わせのようなクロスMD提案も強化するなど、商品づくり、売場づくりの面でも他社とのコラボレーションは増えていくと思います。
日本食ブームは追い風
──さて、12年度の売上高に占める日本の売上は約55%、海外の売上は45%でした。営業利益は海外が66%を占めていて、海外事業の収益性の高さがうかがえます。
堀切 海外事業の営業利益率が高いのは生産性が高いここと、まだ同質的競争が激しくないために、原材料のコストアップを価格に転嫁できるからです。
──日本食ブームは御社にとって大きな追い風ですね。
堀切 そのようにしたいと思います。
海外事業では、今では「KIKKOMAN」は醤油の代名詞となり、北米や欧州、アジアにある7つの海外工場から100ヵ国以上の国々に出荷され、愛用されています。
08年に掲げた「グローバルビジョン2020」では、(1)キッコーマンしょうゆをグローバル・スタンダードの調味料にする、(2)食を通じた健康的な生活の実現を支援する企業となる、(3)地域社会にとって存在意義のある企業となる──の3つを当社がめざす姿として打ち出しています。この3つのめざす姿の実現に向けて、お客さまの声を大切にし、新しい価値のある商品やサービスの開発に引き続き取り組んでいきます。